安敦誌


つまらない話など
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障害の代償

代わりにも償いにもなっていないが、得たものも少しだけある。

昔から、理屈として納得できたことはいくらでも覚えられたが、理屈とは無関係に反復によって丸暗記する科目が非常に苦手だった。歴史の年号だとか、英単語などは覚えるそばから忘れてしまう。今でも、人の名前が全く覚えられない。会議の議事録なども書けない。これも、海馬の損傷と考えれば納得がいく。

ディジタル腕時計の隆盛期、カシオの腕時計にreminderという機能が付いていて、それを愛用していた。何か覚えておきたいことがあると、それを念じながら腕時計のボタンを長押しする。すると、腕時計の表示板の隅に小さな印が点滅する。あとでその点滅を見たとき、自分が何かを記憶しておかなくてはならかったことを思い出す。そして、記憶を手繰っていくことでボタンを押すときに念じていたことを思い出す。この機能は非常に便利だった。たった一つのことでも、ボタンひとつで記憶できることにとても感心したことを覚えている。逆に言えば、たった一つのことを覚えておくにも機械の手助けが必要だった。

しかし、海馬が正常な健常者にはこの機能が不用だったらしく、残念ながらこの機能は廃れてしまった。この機能を組み込んだ技術者に、今さらながらに思いを馳せる。かつて、理科系の人間は対人関係に障害を持っているのだと罵倒されたことがあったが、それも半ば事実だったということを今さら知って愕然とする。おそらく、海馬の損傷によって機械的な記憶がしにくくなったことで、大脳新皮質の長期記憶を司る部分が余剰となり、既存の記憶と無矛盾になるように論理的整合が取れた記憶を保持する能力が、健常者よりも発達したのだろう。

これはつまり、既存の記憶と論理的整合を取る連合記憶に障害を持つ代わりに、機械的なレコーダー的記憶が異常に発達したサヴァン症候群の、ちょうど逆の現象が起きているのだろう。おそらく、こうした傾向の持ち主が、論理的思考の連鎖が続いてしまう哲学者になってしまうのだろう。これを仮に「ソクラテス症候群」と名付けるとすれば、私の場合は軽度のソクラテス症候群患者ということになり、ボンクラテスと呼んだ自己評価はそれなりに正確だったのではないかと思う。健常者であれば、論理連鎖による思考よりも、他人との会話の直接記憶などを呼び出したほうが神経コストが小さく、わざわざ哲学的思考をする動機が無いということになる。

このように、記憶型人間と論理型人間の差異が多分に器質的原因によるものだとすれば、その両者の相互理解は不可能ということになり、間に横たわる意思疎通の溝は無限に深いということがいえるのかもしれない。そして、無理解な健常者の非論理的言説に接して、論理型人間はその矛盾を捉えて怒りを感じてしまう。

一方、コンピュータは高い論理的整合性を保ち、磐石の記憶力を惜しみなく人間に提供してくれる。これは論理型人間にとって、離れがたい親友となりうる性質を持っている。というよりは、恐らくは論理型人間たちがその孤独を癒すために作り上げたピュグマリオンこそが現代のコンピュータシステムなのだろうから、当然といえば当然の性質なのだろう。記憶型人間がコンピュータに対して抱いている嫉妬にも似た違和感も、あるいは似たような原点を持っているのかもしれない。

幸い、私自身は多少の暗記も不可能ではないし、人間の感情もそれなりに理解することができる。健常者社会から少し距離を置けば、恐らくは正常な人間として生きることができるに違いない。大きな組織から離れて生きる方法を模索すべきかもしれない。
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by antonin | 2009-07-06 00:57 | Trackback(1) | Comments(0)
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