安敦誌


つまらない話など
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俳諧野郎ワビー&サビー

詩というものがあって、あれは何かというと、恋愛感情であるとか、憎しみの感情であるとか、あるいはへこたれた気分であるとか、そういうあられもない感情を、なんだかわかんない程度に偽装して書き表す技術である。直情的な文章をあまりに明確かつ明快に書き表してしまうと、それが人の目に触れた場合には大変な問題を引き起こしてしまう。少なくとも恥ずかしいことになってしまう。

ところが、文法とか文脈とかを少し破壊した文章を使って、その中に自分のドロドロだったりベタベタだったりキラキラだったりする動物的な感情をほのめかすことによって、健全な感情を持った読者には「ふーん」と受け流され、似たような感情を抱いた読者にだけ「わかるわかる」と受け止められるメッセージを放つことができる。

美術にしても似たようなものであって、単に女の裸を眺めて過ごしたい男たちが、「これは生身の人間の女を象ったものではなく、あくまで天界の女神の姿を称えたものである」という言い訳を駆使して、サロンなり広場の真ん中なりに女の裸体像をさらしておくテクニックにその起源を求めることができる。

時の権力から不遇を託っている不満を、そのまま直接に表現してしまうのでは危険が大きい。そういう場合に有効なのも、神話に題材をとった寓話であったり、ごく日常的な舞台を表現の場として借りた風刺小説であったりする。あるいは、同じ悩みを持つ者だけが自分の悩みを暗示しつつ同類を求めるための装置でもある。同じ気分を共有しない読者にとっては、単なる物語として受け流される。

最近、太宰治の生誕百年だか何かで話題になっているが、「この歳になって読むと太宰治はなんだかつまらないですね」だとか「太宰作品はギャグだと思ってますからw」というような意見をよく読む。それはそれでいいのだが、例えば「人間失格」などはダメ人間によるダメ気分告白の書なのだから、結局「俺もダメ人間です」「私もダメ人間です」という読者が集まるための寄り代に過ぎない。ケータイ小説なども似たようなものだろう。あれは物語によって偽装された愚痴に過ぎないのだが、それこそが目的なのだからそれで別に構わない。

「あいつが大嫌いだ、あいつは最悪の下衆だ」では単なる誹謗中傷、あるいはそれ以下の罵声に過ぎないが、たとえば神話の中で神に滅ぼされた悪党の話をリライトする際に、その悪党の属性をちょっとだけ「あいつ」っぽくしておくと、それは罵声から芸術に昇華されるのである。目的は「あいつが大嫌いだ」という感情の発露ということで全く同じなのだが、結果はおそらく異なる。

「こんなに頑張ってる俺スゲー」をそのまま発露するのは恥ずかしい行為だが、やはり歴史上の人物伝をリライトする際に、自分が心酔したライフハック技術をフル活用して成り上がっていく主人公を描くことによって、矮小な個人の恥ずかしい自己愛が壮大な歴史物語に昇華していくのである。

だからまぁ、なんだろう。わからない奴に邪魔されずに、わかる奴にだけわかってもらえたらいい、そんな気分をさらけ出すためだけに、ちょっとだけ芸術について学んでみてもいいような気がしてきた。オドロオドロしい感情だけはたっぷりある。そのままでは毒だが、酢漬けやてんぷらにすれば案外食える食材というものも、ままある。きっとそういうことに違いない。
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by antonin | 2009-11-22 21:35 | Trackback | Comments(0)
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