安敦誌


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経済学について

学問には、大きく分けて二つの方向がある。ひとつは、絶対的な真理があって、一度その真理を発見すれば、不変であり普遍である真理に関する学説は揺るがない、というようなもの。これも学問の進歩によって定説が崩れることがあるが、それは古い説が間違っていたり正確さが不十分だったりしたためで、未知の真理を徐々に暴いていくという方向には変わりがない。物理学などはこの手の学問ということになる。

もうひとつの方向は、細かな知識や技術を作り出し、それを積み上げて体系化していくもの。あるいはそうして人間が積みあげてきたものに対する学問。ある時点で存在する知識や技術の限界がそういう学問の限界を規定するが、それは新しい工夫や発明によって書き換えられていく。古い知識は次々に陳腐化していくが、それは古い知識が間違っていたというわけでは必ずしもなくて、単に新しい知識の方が優れていたり、新しい技術が主流になったりして、古いものが必要なくなっただけということが多い。各種工学や法学はこの手の学問になる。

自然そのものが持つ性質、あるいは人間そのものが持つ性質などはそうそう変わるものではないから、それに対する究明というのは、古いものほど不正確で、新しいものほど正確ということになる。ところが、人間の作る知識や技術を積み上げていく工学や法律では、実際に使われていて利用可能な技術の体系や、実際に施行されていて有効な条文や判例の体系に学問そのものが依存していて、その依存しているところの技術や条文というのは、部分部分ではあるが、日々常に新しく書き換えられている。

こういう、変わらないものに関する学問と変わるものに関する学問という区別で考えると、経済学というのは変わるものに関する学問、つまり理学よりは工学に近い種類の学問なのだと思う。経済学とはカネに関する学問なのだけれども、それは当然カネにまつわる法律の影響を受けるし、カネにまつわる社会通念の影響を受けるし、カネにまつわる宗教道徳的信条の影響を受ける。同じ人間のやることなので大筋は同じ理論で通用するはずだが、各論ではそういういくつかの社会的要因の影響を受ける。

経済学の本場というのはおそらくアメリカで、日本からは数学的基礎の提供などを除けば、あまり本格的な経済学の業績というのは出ていない。もちろん、学問的なものではなくて実務的な実績を探せばかなり影響の大きなものも出ているとは思うのだけれども、国際的な影響力を持った学説というのは出ていないように思う。

そういう日本の経済学で、国際的な学会でコンセンサスの得られた学説がこうであるから、日本でこういう説を述べるのはバカなことである、というようなことを言う経済学者がある。まぁ私自身が経済学に詳しくないのであまりその意見の適用範囲というものが判断がつかないのだが、どうも、まだやってもいないことに対して既存の経済学を振りかざして結論が見えているというようなことを言っている危険性を感じる。

経済学が工学と同じものだとすると、現状の知識を利用して人間の限界や問題対処の定石を推定することは可能なのだけれども、工学が理学と違うところは、既存の技術を駆使して問題を解決するという方法の他に、新しい技術そのものを開発するという方法が使えるというところにあるから、経済学的コンセンサスなどというものも、法規制や人々の意識の変化などで前提からひっくり返ってしまう可能性も常に含み残される。上に挙げたような経済学者さんには、そういう経済学そのものが持っているはずの流動性が見えていないのではないかという気がする。

ではそういう人の言うことが間違いかというとそうではなくて、おそらくはその人が言っていることが正しい可能性が高いのだけれども、そうではない可能性もあって、つまりはやってみなければわからない部分が多分にあるのだろうと思う。現状の法律や企業の構成が全く変わらないという前提か、あるいは既存の経済学が持っている応答だけを社会が見せるとするならば、それは必ず正しいと言えるのだろうけれども、社会はもう少し複雑な要因をたくさん持っていて、しかも日本人はアメリカ人ともドイツ人とも中国人とも違う精神を持っている。

そういうことを言い出すと日本には日本独自の経済学が必要ということになって、そのためには精密な実証データや実験的試行錯誤の結果データなども必要になってくる。そのはずなのだけれど、日本の学問というのは蘭学漢学の昔から外来学問の研究に重点が置かれているので、現場はともかく大学などではあまり柔軟な仮説の積み上げというのは厚くないような印象がある。激しい勢いで変化しながら先行する欧米の経済学に追従するだけで精一杯、というように、門外漢からは見える。

マルクス経済学などというと、もう口にするだけで軽蔑されるような印象があるが、これも単にこの経済学が古いから、その後の取引手法や通貨法規、更には兌換制度の変更などもあって実情に合わない学問になっているというだけで、マルクスの主張した経済学が間違いだったということではない。もちろん一人の主張した学説なので、その全てが正しかったということはないだろうが、当時の経済情勢の分析としてはそれなりに正確なものだったのだろうなという印象がある。ただ、歴史観と革命思想については、やはり勇み足だったのだろうと思う。

ジェット機の設計にライト兄弟の設計を利用するのは間違っているが、舵を機首に置く設計はともかく、プロペラのデザインは今でも低速飛行では効率的なデザインのひとつとして残っている。主翼そのものをひねって操縦する技法も、グライダーなどで一部利用されている。飛行速度や積載重量よりも、滞空時間や低消費エネルギーなどを優先するというような社会背景の変化が起これば、ライト兄弟の設計からでも参考にできる部分はあるだろう。

間違いであると否定された、というのと、状況が変わったので必要とされなくなった、というのは異なる。同じ過去の知識の中にも、間違いであったと否定されたフロギストン仮説のようなものもあれば、扱いやすい内燃機関や電気機関の登場で忘れ去られた蒸気機関に関する技術のようなものもある。

経済学の立場からいろいろと言えることはあるのだろうが、この時代のこの国のために書かれた経済学の教科書というのは、当然存在しない。今はある程度は実験的に進めなくてはならない場面なのだろうと思う。対立する意見を聞けば、失敗する場合の悪影響というのもある程度は予想がつくのだから、失敗に対する備えも可能な範囲で用意してから、あとは思い切ってやってみるしかないのではないかと思う。

そういう意味では竹中平蔵さんは理論を実践に映す機会を得た希少な学者さんであるので、自分が正しくてその後の政権が間違いだったと主張し続けるよりも、経済政策のどこまでが有効に働いて、どこからが無効で、更には予想通りにいかなかった理由が学術的にどのようなものと推定されるのか、そういうところを全力で分析する必要があるんじゃないかと思う。まぁ、これは竹中さん本人のすべき仕事ではないのかもしれないけれども。

ともかく、まだやってもいないことを騒ぎ立てるよりも、これまでにやってきたことの影響を、良いことも悪いことも、予想通りのことも予想外のことも、冷静に分析して後世への知識として残していくことが経済学者の仕事なんじゃないかと思う。先のことは、とりあえずどこかに方向を決めてやってみたらいいんじゃなかろうか。まぁ、声のデカい人が少しはいないとアカデミックな学問は実務家まで届かないから、そういう意味では白か黒かの分かりやすい声明を出す人があってもいいんじゃないかとは、思う。
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by antonin | 2010-09-06 03:47 | Trackback | Comments(0)
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