安敦誌


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以前の記事

ホメオパシーについて

しばらく掛かったが、ようやく書く気が起きたネタ。

--

安敦誌で書き始めた頃の記事に、ホメオパシーをネタにしたものがあった。なんか変なノリの文章になっているが、まだ文体が定まっていなかった頃なのでしかたがない。本来、どちらかというとこういう変なノリのblogを目指していたんだけど、お堅い文体で固定化してしまったのは、実は残念に思っている。

話が逸れたが、リンクを。

安敦誌 : 波動の系譜

ここで「いわゆる波動」と並んで取り上げているのが「ホメオパシー」で、つまりは胡散臭い文脈で登場しがちな単語とみなしている。確かに現代のホメオパシーは怪しい雰囲気が満点なのだが、本来はそんなに怪しい考え方ではなかったのではないか、という観点からちょっと書いてみる。

このホメオパシーという「療法」を開発したのは、サミュエル・クリスチャン・ハーネマンというドイツ人医師であるとされている。研究自体は連続して行われたのだろうが、一応明確な年代を記載したページをネットで拾ってくると、次のようなものが見つかった。

ホメオパシーとは?:ホモトキシコロジーのヤーパンヘール
 ホメオパシーとは、薬のように痛みを無理矢理止めるのではなく、 その痛みを引き起こす成分と同等の薬で人間の自然治癒力を高めるものです。先述の薬はアロパシー逆症療法ともいい、現代西洋医学は アロパシー医学の典型的なもの。熱が出たら解熱薬、便秘には下剤など、出ている症状と反対の効果があるものを投薬する治療法です。

 これに対してホモトキシコロジーは、類似療法と呼ばれ、1810年にドイツ人医師のサミュエル・クリスチャン・ハーネマンによって開発された治療法です。

というわけで、だいたい1810年頃に提唱された療法だということらしい。この時期は重要で、現代医学でも有用な医学知識として定着しているワクチンがエドワード・ジェンナーによって開発されたのが1798年となっている。

天然痘 - Wikipedia

ワクチンによる療法というのは、弱毒化した病原体を健康体の人間に接種することにより、病原性の細菌による感染症に対する防疫を事前に行うというものだった。当時はまだパスツールによって病原体としての微生物が発見される前だったので、「天然痘に似ているが病原性の少ない病気にかかることで、人体に天然痘に対する抵抗力が生まれる」という現象面しか分かっていなかった。この考え方を拡張していくと、人体には弱い毒によってその毒性に対する防御体制が発現するのではないかという仮説を考えることができる。

そして、1810年である。天然痘以外にもこの拡張されたワクチンの考え方を実験してみようとした医師が現れたとしても自然な流れであるし、この当時としては決して「トンデモ」系の発想ではなかったのだろうということがわかる。ただ、ジェンナーのワクチンほどにはハーネマンの弱毒投与による防疫が劇的な効果を上げることができなかったと見え、この弱毒による耐性獲得に関する研究は医学会の主流から外れていく。

そして気が付くと、医学会から見捨てられた弱毒防疫はホメオパシーという民間療法としてかなり非科学的な形で理論が確立し、そして草の根で普及していった、というような展開だったのだろう。現代の「レメディ」と呼ばれる極端に薄められた毒液を用いるホメオパシーの理論系統はそんなに分岐してはいないようだが、おそらくヨーロッパあたりにホメオパシー中興の祖といえる人物があって、そのあたりに源流を持つ理論が日本にも入っているのだろう。

本来的に考えれば、ホメオパシーというのは健康な人間が予防的に取り組むべき医療だったはずだが、現代日本で観察されるホメオパシーの実践方法によると、熱が出てからレメディを飲んで「治療」したり、生まれたばかりで一番弱いはずの新生児にビタミンの代わりにレメディを飲ませたりして、理屈からしても妙なことになっている。

実際、人体には感染症に対する免疫機構の他にも、様々な外来刺激に対する防御機構があって、その多くは実際に刺激を受けてからでないと機能しない。例えば「日焼け」という現象があるが、これは皮膚が紫外線を受けると、DNA損傷の原因となり有害な紫外線が体内に浸透しないように、紫外線を吸収するメラニン色素を多く合成するために、皮膚が褐色に着色する。

しかしこの過程でも人体はある程度被害を受けているし、表皮細胞の分裂が活発になるために、老後にシワが増える原因になったりする。それでも強度の紫外線を受けて真皮組織などが損傷を受けるよりはマシだということで、人体は二三日ほどでメラニン色素を増強する仕組を持っている。適度な強度の日光を受ける日光浴は、避けることのできない紫外線刺激に対しては有効な防御策になる。

また、人体には自然界から食物などを通じて摂取する多様な有機化合物による毒性に対応する仕組も持っている。酒に含まれるエタノールなどのありきたりな化合物については専用の分解酵素を(下戸の人以外は)持っているが、それ以外の種種雑多な化合物を摂取すると、その多くの分解に関与する万能(とまではいかないが汎用的な)分解酵素であるシトクロムp450というものを肝臓に用意していて、これを用いて多くの有機化合物を分解して無毒化することができる。

このシトクロムp450も、この酵素が有効であるような化合物を低量で継続的に摂取していると、やはり肝臓の中に増えて耐性が亢進するようになっている。なので、この理屈で行くと、この手の分解酵素の生産を刺激するが、しかし中毒症状が起こらない程度の有機毒を継続的に飲んでいると、それを飲んでいない人に比べて、中毒が出るほどの量の毒物摂取に対する抵抗力が上がるということは考えられる。これはまさにホメオパシーの考え方と同じものになる。

しかしそれにしても肝臓その他の臓器は小さなダメージを受け続けるはずで、弱毒を継続的に摂取するメリットとデメリットを天秤に乗せて、トレードオフを考慮した予防をすることは必須と考えられるし、一直線に健康になるという性質のものではないことになる。もちろん金属毒などの防御機構が異なる毒物に対しては、同じ方法が使えるとは限らない。

この点はウィルスや細菌に関するワクチンでも同じような考え方が必要なのに、一般市民の中にはトレードオフの考え方がなく、白か黒かの極端な判断をしてしまって問題をこじらせているようにも見える。そういう一般知識に近い人々によって運用されているだろう療法が現代のホメオパシーで、そのためにいろいろな問題が発生しているように見える。これはこれで大問題なのだけれども、「インチキ」の一言でホメオパシーを切り捨てている側の人にも、似たような危うさを感じることはある。

善か悪か、真実か虚偽か。そういう白黒判断は強力な道具で、複雑なトレードオフを吟味すると、結果的には単なる優柔不断に陥ってしまう場合もある。それでもやはり、キレの良すぎる一刀両断の意見には、いつも違和感を持ってしまう。目の前のリンゴには微妙な色彩があるのだが、人間はそれを指して「赤い」と言い切らなくてはならない場面がある。ただ、リンゴが赤いと信じて疑わない人もあって、人間は厄介な問題を起こす。

「赤い」というものがたったひとつの何かであるという感覚は、実は人間の神経組織が持つ、基本的かつ非常に強力な情報処理機構の産物なのだろうという話に続くのだが、それはまた今度。

--

そういえば、ブログの書き込みごときを「記事」と呼ぶのをちきりんが嫌っていたが、なんでだろうと思って辞書を引いてみたら、「記事」は「事実を記したもの」との説明がある。そうだったのか。単に「記した事」だと思ってました。で、そのちきりんは「エントリー」という用語を当てているのだけれども、"entry"がどういう意味で使われているのか気になったので、これも辞書を引くと「(帳簿等の)記載」という説明が見つかる。ふーん。単に「(データベース等に)入力したもの」という程度の意味なのかもしれない。

ここで書いているような内容は「思ったこと、考えたこと」が中心なので、「事実の記載」とはちょっと違うけれども、まぁ考えちゃったのは事実なので、「…と思う」というのもある意味、事実の記載ということになりはしないか。なんだか面倒なので今後も「エントリー」という意味で「記事」という言葉を使い続けていこうと思う。より強力な異論がありましたらコメント等でお寄せください。
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by antonin | 2010-09-26 01:23 | Trackback | Comments(3)
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Commented by tak-shonai at 2010-11-02 10:41 x
ホメオパシーの最近の叩かれ方を見ていて、なんとなく割り切れない思いがしていましたが、この記事を読んで、その思いが晴れました。ありがとうございました。
Commented at 2010-11-03 20:34 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by antonin at 2010-11-06 16:21
>tak-shonaiさま

コメントありがとうございます。
割り切れた結果の記事も拝見しました。
おそらく同じように考える人も少なくないのではないかと思いますが、一番肝心な部分が通じない人もまた少なくないようで、コメント欄でのやりとりを読んで溜息が出ました。

こちらも2日以降アクセスが急増しましたが、「通じていない」方たちはリンク先まで読んだりしないらしく(笑)、こちらで面倒なコメントを見ることはありませんでした。

こちらこそよろしくお願い致します。
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