by antonin
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古代ローマ文明というと、連想するのは白亜の石像と鷲の軍旗と、それから公衆浴場あたりか。頻繁に風呂に入って身体を清潔に保つというのは古代ギリシャ人もやっていたらしいが、あちらは軽く沐浴すると香草で香り付けしたオリーブオイルで皮膚をこそぐというやり方だったらしいから、豊富な湯で体を洗うスタイルはやはり火山の多い半島に生まれたローマ文明に固有になるようだ。まぁ、異文化を受け入れることに抵抗のないローマ人だから、元をたどると周辺部族のどこかに起源を持つのかもしれないが。 ローマが「世界の首都」に成長してからも、遠い源流から引いた水道で、飲み水と風呂水と、ついでに淡水魚養殖の水まで確保していたらしく、都市部の住民も入浴の習慣は保っていたらしい。また、ローマ軍団が地方に軍団基地を基本とした都市を建設するときにも、可能であれば必ず公衆浴場を確保したらしい。それは地中海沿岸の北アフリカでも同様だったという。 ローマ帝国は紆余曲折あってユダヤ教会を滅ぼしてしまったので、ユダヤ教やその派生であるキリスト教では古代ローマの、特に帝政ローマに対しては非常に評価が低いのだが、そういうユダヤ教としても入浴の習慣は良いものとして認めていて、ローマ人は銅像を磨くのに熱心だが、ユダヤ人は風呂で体を磨くとかなんとかいうユダヤ側の言い伝えもあるそうだ。 そうして市民が体を清潔に保っていると、人間が密集して生活している都市部でも疫病の流行などが起こりにくく、したがって健康レベルが高く保たれていたのが人口増大につながり、ひいては国力増強の一因になっていたという説もあるらしい。そういうローマ帝国も、後期になると人口減少が目立つようになる。水道管に使われていた鉛が水道水に混入し、それを毎日飲んでいたために鉛中毒になり、そして不妊傾向に到ったのではないかという説もある。しかし今の日本を眺めていると、生活環境が豊かになると子供は減るのが自然なのではないかという気もする。 衰退期のローマでは疫病も頻発するようになる。穀倉地帯が周辺部族の侵入で荒らされて市民の栄養状態が悪化したのが主要因だとは思うけれども、水道の保守が行き届かなくなり、入浴の頻度が落ちて衛生状態も悪くなったという原因も考えられるらしい。 そういう具合で、「垢抜ける」という表現もあるけれども、身体の清潔度が上がるというのが文明人の特徴の一つであり、それは病気になりにくいという結果につながってきた。その後にローマ文明は解体してしまうのだけれど、その後も文明は発達し続け、医療というのは「けがれたもの」を排除していく方向で進歩していく。けれども、なんというか、何ごとにも限度というものがあって、そろそろ私たちの文明はその限界近くに達しているのではないかという感じもある。 私が幼稚園に入った頃は、それまで集団生活の経験がなかったからか、週に一度ペースで熱を出して寝込んでいたらしい。2年間幼稚園に通ったが、その当時の登園スタンプ帳を見ると、1ヶ月皆勤なのはたった1回しかなかった。結果として近所の内科医院には常連患者になっており、いつも抗生物質の入った薬を飲んでいた。一度は熱性けいれんで救急車で運ばれたこともあった。どうやらこの体質は遺伝するらしく、ムスメも一度熱性けいれんで救急車で運ばれている。 こうして体が雑菌に侵されるたびに抗生物質を投与すると、確かに病気は治るのでありがたく、時代が違っていたら私は七五三を祝う前には死んでいたのではないかとも思う。しかし近年の生理学的な知見によると、免疫系というのは学習する系であり、あんまり先手を打って抗生物質が雑菌を打ち倒してばかりいると、要は免疫系がバカになってしまうというようなこともあるらしい。 免疫がバカになるとどうなるかというと、外敵の侵入に負けてしまうという形よりも、ちょっとした外敵の侵入に過剰反応してしまって味方に巻き添えを食らわすという、「自己免疫疾患」という形で現れるらしい。その一部は深刻な病気になるのだけれども、より軽い部類では花粉症のようなアレルギー反応として現れる。 戦後の復興期に建材需要を見越して一斉に植樹した杉の木が、最近になって一番花の多い状態になりながら、もはや国内に林業の担い手がいないために伐採されないまま放置されているために、スギ花粉の絶対量が多いというのは確からしい。しかしそれだけでは花粉症という「病気」がこれほど増加した説明としては足りないので、ディーゼルエンジンの排気ガスに含まれる粒状物質(PM)との複合要因なのだとか、いろいろな仮説が出されている。 けれども昔の青っ鼻を垂らしていたハナタレ小僧時代を経験している世代には花粉症の例が少ないだとかいう話は有名だし、健康保険の充実で「風邪にはとりあえず抗生物質」という育ち方をしてきた人間が花粉症になるのではないかと、個人的には予想している。といってこの手の情報をストレートに開示しても、抗生物質ゼロにこだわるような極端な恐怖を煽る商売が横行するだろうし、抗生物質を含む薬剤の売り上げにだって影響するだろうし、専門家がそれなりにデータを得ているとしても、あまり大きな声では言えないような状態なのではないだろうか。 牛肉はそれなりに高いが、豚肉や鶏肉は安い。そういう肉が安いのは、生育に必要な期間が短いのが主要因だが、もうひとつ、狭い面積の養育場に大量の家畜を詰め込んでも伝染病が発生しないように、未然に抗生物質を多めに投与しているというのは暗黙の了解事項でもある。これも合成化学物質が大嫌いな自然志向の人には理解されにくいのだが、抗生物質を使わない場合の生物毒のリスクと抗生物質を使った場合の化学毒のリスクを比べると、普通は生物毒のリスクのほうがはるかに大きい。それを同程度に抑えこもうとすれば、豚肉も鶏肉も、日常的にはおいそれとは買えないような高級品になってしまうだろう。 ただし、そういう経路を通じて抗生物質というのは処方薬以外からでも人体に流れ込んでいる。ここでも食肉を通じて体内に入ってくる抗生物質が悪さをするリスクが顕在化する前に、普通に肉を食べ過ぎる栄養バランス上の健康リスクのほうが先に現れてくるだろう。むしろ逆に、畜肉をよく食べる人というのは家畜に似て、人口密度の高い環境に置かれても伝染病に罹患しにくいというプラス面の影響さえ、慎重に調べれば見つかるかもしれない。 ただやはり、そうして日常的に流れ込んでいる抗生物質によって私たちの「文明的な」免疫系はバカになってしまっており、そのまま出番がないまま終われば良いが、一度実戦体制に入ると、勢い余って余計なことをしでかす率も高まっているのではないかと思う。 花粉症をはじめとするアレルギー症状の対策としては、第一にアレルゲンの除去が挙げられる。つまり、バカになった免疫系の出番を止めるのが対策としては第一になる。ただ最近ではこの傾向にも変化が見られ、アレルギー反応に対して対症療法で症状を抑えておきつつ、少量のアレルゲンに接触してアレルギー体質そのものを改善するというような治療法も一部で提唱されてきている。 私たちは毎朝石鹸で顔を洗うが、実は顔を洗ったままさっぱりつっぱりの状態で放置すると、皮膚を保護するべき皮脂が不足したことを皮膚が感知して、皮脂の分泌量は増えるらしい。そうすると皮脂を分泌する腺に皮脂が詰まってニキビや吹き出物になる率が、かえって高まるようなこともあるらしい。これに対する対策は二通りあって、ひとつは石鹸で皮脂をきっちり落としたあとに、乳液やクリームを塗って皮膚の表面に油分を補給すること。もうひとつは、顔を洗うときは水洗いと布拭き程度に留めて、天然の皮脂を皮膚の上に残すこと。そうすると、皮脂の過剰分泌はおさまるらしい。 免疫系についても、おそらく状況は似たような感じなのではないかと思う。人工的に雑菌を取り除く代わりに、過剰な雑菌との接触をきっちりと管理し、清潔な状態をあくまで人工的に維持する。有用な菌が死んでしまったら、抗生物質に強い菌を人工的に摂取する。これがひとつの道。もうひとつは、緊急時以外は人工的に雑菌を取り除こうとはせず、ある程度は人体の免疫力が力を発揮するのを待つという道。 文明か、あるいは野生か。一応二律背反に見える選択肢ではあるのだけれども、もはや人類が完全な野生の生活を取り戻すというのは無理だろうから、文明的でありながら、しかし完全な清浄を目指すのではなく、「調教された野生」を活かす術を見つけていく方向にはなるのだろうと思う。 そういえばこの文章を書こうと思うきっかけになった記事について書き忘れていた。 ピロリ菌の除菌治療を効果的に行うために - goo ヘルスケア ピロリ菌の完全除菌が適切であるような人が実際に少なくないのだろうとは思うけれども、胃の中にピロリ菌がいるようでは先進国の人間として恥ずかしいというような論調になると、それはちょっとどうなんだろうかとも思う。 ちなみに私は上の記事の中に出てくる「特発性血小板減少性紫斑病(ITP)」というのを14歳の時にやったことがある。成人では慢性化して面倒なことになることもあるらしいが、発症の多い思春期男子の場合は半年以内には放っておいても治ることが多いらしい。 特発性血小板減少性紫斑病 - Wikipedia 上のWikipediaの記事にある「急性」(語感に反して良性の予後が多いケース)の経過をたどり、2ヶ月のステロイド治療ののち、大量グロブリン療法で完治した。白血病診断のための骨髄検査(マルク)というのもやった。腰骨に針を刺す検査で、事前に麻酔を打つので痛みは全くなかったが、骨がゴリゴリ押されているのがわかって気持ち悪かった記憶がある。 「特発性」というのは原因不明というような意味であり、当時は詳細な病因が判明していなかったのだが、その後の研究で少しずつ原因が判明している。Wikipediaの情報をどこまで信用するのかという問題もあるが、一応その記述を信用すると、はしかや水疱瘡などにかかったあとに抗ウィルス作用の副作用で血小板に抗原が付着し、そこに免疫系が攻撃を仕掛けて血小板が減少するらしい。 私のITPが子供時代の病院通いと関連するのかどうかは分からないが、花粉症について思うところもあって、ひょっとすると根のところでは同じような要因があるのではないかということを思い浮かべながら、こんなことを書いてみた。
by antonin
| 2010-11-26 03:33
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