安敦誌


つまらない話など
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陰謀論再び

今回の震災後のドタバタの中で、従来の政官業が緊密に連携した情報統制とは一風変わった、それでもなんとか情報を統制しようという動きが見られた。これは一般市民にとっては(災害の被害を大きく受けるというデメリットとは別に)国家の情報統制の仕組みを理解するためには良い経験になったような気がする。

現在の民主党政権は、基本的に組織された一般職員のための政権なので、政官業の各界に地盤は持つものの、各界の権力の中枢というよりも、その交渉団体によって構成された政権であり、それが権力の中枢に入ることによって、いろいろと裏返ったりねじれたりして面白いことになっている。そういう不安定な構造に加えて、リアルタイム流通するネット情報の効果もあって、国家権力の情報統制の中から、いろいろと断片的だが面白い情報も漏れ聞かれている。

そういう情報の精度を判定するだけの経験も人脈も私は持っていないので、今回の震災に関する具体的な個別情報について真偽を云々することはしない。ただ、今回の事象をよく観察することで、よく情報統制されて理解しにくかった過去の事象について、若干妥当な付き合い方というのが理解できたような気がする。


今回の震災でも関東大震災当時に負けず劣らず不正確な情報が多数流れたが、その中で市原のガス工場火災による有害物質の効果という噂について少し考えてみる。

タンクに相次ぎ延焼 千葉・製油所火災で3人重軽傷 ― スポニチ Sponichi Annex 社会

この火災は製油所での火災ではあるけれども、実際に火災を起こしたのはLPG(液化石油ガス)の貯蔵タンクであり、一般の石油火災とは少し状況が異なるものだった。LNG(液化天然ガス)では炭素比率の少ないメタンが主成分なので、酸素不足の燃焼では赤く燃えるものの、ススというのはほとんど発生しない。LNGに比べると炭素比率の多いプロパンやブタンなどを主成分とするLPGでは、極端に酸素不足の状態で燃焼すると、多少のススが出る。しかし、LPGには石油由来の硫黄分などといった炭化水素以外の不純物はほとんど含まれないので、あまり有害な成分とはならない。今回の火災で上がった黒煙というのは、おそらくそういう無害な炭素成分だったのだろう。

ところが、常温常圧で液体となるようなガソリン、軽油、灯油、重油などの石油製品や、未精製の原油に近い成分が火災で燃焼すると、もう少し厄介な事態になる。沸点の高い石油製品はLPGよりさらに炭素比率が高く、酸素不足環境下での燃焼では、ベンゼン環や多員環などといった比較的毒性の強い化合物を含むススの発生確率が高まる。

また、精製前の原油に含まれる硫黄を含む成分が燃焼すると、硫酸などの酸や、含硫黄有機化合物などが発生し、これがススに付着して生体への毒性が高まる可能性もある。現在では環境保護基準が年々厳しくなっているため、エンジン駆動用燃料としてのガソリンなどに含まれる硫黄成分は、精製段階でほとんど除去されている。しかし、日本に輸入されている中東産の原油は、ヨーロッパで使用されている北海産の原油などに比べると比較的多量の硫黄分を含んでいるらしい。

原油の種類

日本国内の製油所では、そういう硫黄分の多い原油から蒸留や化学処理によって硫黄分を除去して、燃料製品を生産している。その製油所で火災が発生すると、精製前あるいは精製過程の中間物が燃えてしまうこともあるし、ひどい場合には精製過程で取り出した硫黄化合物に燃え移ってしまう可能性もある。今回の市原製油所でのガス火災も、そうした原油の精製過程の末端にある石油ガス製品を貯蔵しているタンクで起こってしまった火災であり、火災の程度によっては上流工程の方まで延焼してしまう可能性もゼロではなかっただろう。

そういう予備知識を持った人がどこかにいて、製油所の火災では有害なススが空中に大量放出されることもあるから、直後に雨が降るようならあまり浴びないほうがいい、というようなことをネット上で述べたのかもしれない。未然の可能性に対する用心としては、この説は決して間違ってはおらず、噂の発生過程としては意図的なデマなどとは違ったものだったのだろうと予想できる。

ところが、この断片的な情報を聞いた誰かが、危険だから絶対に雨を浴びてはいけないだとか、関東上空には既に有毒物質が大量に広がっているだとか、そういう誤った理解をしてしまったのかもしれない。あるいは伝言ゲームの中で尾ひれが付いてそのようになってしまったのかもしれない。これが3月11日当時の状況だったのではないだろうか。しかしこの噂はその日のうちに、火災を起こしたコスモ石油の関係者の知るところになり、翌日には今回の火災ではそういう心配がないという発表がなされ、噂は収束した。

ただ若干気になるのは、今回の噂が否定されたことで、製油所の大規模火災で有毒物質など放出されるわけがないという、それはそれで誤った理解が広まってしまったのではないかという部分である。もちろん、製油所の火災でも、密閉された建物内などではないからそれほど深刻な濃度の毒物が発生するわけではないが、今回のガス火災に比べればいくらか毒性が強い煤煙が発生する可能性はある。そうした可能性まで「そんなことがあるわけはない、あの時のデマを忘れたのか」という風になってしまうと、いくらか面倒な感じがする。


今回の大規模な地震災害のように、極端に多数の人の注意が集まるのに対して、情報提供が相対的に不足するような事態に陥ると、どうしても仮説や推論に基づく不確実な情報が飛び交うのは仕方がない部分がある。ある程度時間が経過すれば、徐々に公式情報が流れ始め、噂のある程度は事実として肯定的に確認され、またある程度は事実誤認として否定的に確認される。ただ、すべての噂が正確な情報によって確認されるわけではなく、なんらかの困難があって事実が確認できないだとか、なんらかの不都合があって事実を公表できないだとか、そういう部分がいくらか残ってくる。

福島第一原発での炉心溶融と圧力隔壁の損傷がつい最近になってようやく発表されたが、それまでの期間は噂が噂として流れ続け、どこからも確実な情報が流れないまま放置され続けた。そして「人の噂も七十五日」のことわざがしっくり来るような期間を経て、ようやく公式発表が行われた。今までわからなかったのだ、というような言い方も可能だが、公式発表でも可能性を認めただけであり、冷却水位が炉心高さを下回って何時間経過すると炉心が溶融するというのは技術的にもすでにシミュレーション結果が知られている部分なので、要するにわかってはいたが発表できなかったという結論に落ち着くしかない。

今回は一応発表すべきは発表されたが、菅首相がいきなり現地を電撃訪問した是非とか、福島市内や郡山市内は人が住める状態なのかというような部分については、まだ不明瞭な状態のまま留まっている。その他にも細かい情報の中には事実が明確にされないままに放置されているようなものもかなり残っているだろう。そのうちの多くは本当に重要でない情報なのだろうが、重要であるが影響と責任を考えると公表できない種類のものもいくらかは含まれているだろう。

そのような、公表できない情報のいくつかは、いつまでも秘密にされたまま終わるだろうし、本当に問題のある情報については、計算された嘘で上書きされるだろう。全員が同じことを強く言い張り続ければ、聞き手は信用しないながらもそれを事実として受け入れるより他に道がなくなってしまう。


過去の事件の中で、今でもときどき御巣鷹山の事故のことを思い出すのだけれども、最初に油圧が失われたときに何が起こったのかであるとか、なぜ生存者の救出が墜落の翌朝以降になってしまったのかとか、そういう部分については苦しい説明がわずかに残っているばかりで、今でも不明なまま放置されている。そうして放置された部分は空想家によっていろいろな方向に脚色されて、今では中性子爆弾による意図的な撃墜だったとかそういう領域まで尾ひれが広がっている。

明らかに尾ひれだと分かる部分もあるし、公式発表よりも苦しい仮説も多い。まことしやかな物語も見るし、身分を明かさない証言者の話なども見る。しかし、そういう信頼度の低い情報の数々を見ると、本当にそのすべてが空想の産物なのかというと、あながちそうとも言えないのではないかという疑念が消えない。今回の震災や、北朝鮮による拉致被害者の帰還の時の情報の流れなどを見ていると、明確な悪意とはまた別の、組織を守るための全力を尽くした嘘のようなものが、やはり透けて見えてくる。

出前をなかなか持ってこない蕎麦屋に電話で文句を言うと「もう出ました」と答えるというのが古典の世界だが、その回答の信頼度はあまり高くないということもお約束になっている。それが悪意に満ちた欺瞞などではなくて、止むに止まれぬ嘘なのだということは、勤め人としてよくわかる部分がある。わかるからこそ、公式発表が完全に正確な事実表現でも、あるいは完全な作り話でもなく、その中間のどこかに位置するものなのだろうということもわかる。また同時に、荒唐無稽にも見えるうわさ話も「火のないところに煙は立たぬ」というように、見えているのは煙だけだとしても、その先の見えない部分にはやはり火があるのだろうな、という推定までは捨てなくてもいいのだろうと思う。

日本平和を救った田中角栄を称賛する-JAL123軍事破壊・軍事焼却の背景は中曽根康弘軍事指揮にあり- 横浜文化カレッジ・Yokohama CC/ウェブリブログ

JAL123便墜落事故-真相を追う-そしてミサイルは発射された(1) - (新) 日本の黒い霧

●情報統制の4原則というものがある(EJ第1075号): INTEC JAPAN/BLOG

大きく尾ひれの付いていると思われる俗説を挙げてみたが、結局、下のリンク先にあるような判断に落ち着くのが、そこそこ妥当なのではないかと思う。

池田昌昭『JAL123便 墜落「事故」真相解明』

「あっち向いてホイ」ではないが、相手の指と同じ方向を向いてしまう騙され方もあれば、指と反対側を向いてしまう騙され方もあるのだろうと思う。指の動きに惑わされずに正面を見て物事を捉え続けるのは、案外に難しい。噂を鵜呑みにするのはバカのやることだが、噂を完全否定して悦に入るのも、結局は同じようなものだろう。この震災に絡む騒動でも、やはり眉に唾して情報に接する必要があるのだが、なかなか難しいところではある。
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by antonin | 2011-06-05 00:34 | Trackback | Comments(0)
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