by antonin
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以下、一度没にした文章を若干手直しして再掲したものです。 -- 最近は2ちゃんねるのまとめサイトくらいしか読んでなかったのだけれど、久しぶりに自宅でアルファなブログなどを読んでみたので、感想を。本当はfinalventさんの愚痴にも反応しようとしたのだけれど、途中で面倒になって蔵にしまった。そのうち出てくるかもしれないし、そうならないかもしれない。 「税と年金の一体改革」 ちきりん私案 - Chikirinの日記 人生の一発逆転という悲しい夢 - Chikirinの日記 この二つの意見が、根のところで鋭く矛盾してるんだよ、というところを書きたいのだけれども、本題はちょっとあとに回して、まず日本の税制というか社会保障というか、そこらへんの意見から。外国の税制について詳しくないので、これは日本の税制と、理論的にありがちな話との比較なのだけれど、日本の税制には二つの特徴があると思う。それは、日本は平均税率がすごく高いというのと、税の累進性がすごく低いということだと思う。 まず、日本は個人所得に対する税率がとても低い。そして、消費税などの間接税率も、さらに低い。その代わりに、各種保険や社会投資に加入することが、ゆるく強制されていて、それがあいまいな税金として機能している。その最大のものが年金で、国民年金でも学生から老人一歩手前の人までほぼ一律で集金される。サラリーマンだと厚生年金の手厚い保証を維持するために、給与に比例した高い保険金が天引きされていて、それに加えて「会社負担」という美名の下に、給与明細に記載すらされない人件費総額の中から実質的な給与天引きを受けている。 この年金というのはかつての人口ピラミッドがちゃんとピラミッド型をしていた時代には、余剰金がどんどん蓄積するシステムになっていて、その余剰金をせっせと国に貸し出して、社会資本の整備などに使われていた。それがようやく社会資本の維持期に入って、今後は労働人口に匹敵する老齢人口を抱えながら人口減少局面を迎えるという、余剰金放出期間に入る。というか、もう入っているので大問題になっている。過去の余剰金は国に貸し出して使ってしまっているので、今後は国から貸した金を返してもらわないといけない。その原資は、国民からの税金というキャッシュか、将来の経済成長に対する期待を現金化する債権販売か、だいたいどちらかの形になる。 合衆国も債権が憲法か何かの法令が定める上限に間もなくぶつかるので、上限を引き上げないと借金の借り換えができなくなって、返済期限のきた国債が先に焦げ付いて政府が不渡りを出しますよ、という話になってオバマさんが忙しくなっている。アメリカは移民のおかげで人口も上昇基調だし、ソヴィエトも中東もやっつけて、借金は増えたけどしばらくは国際政治の覇者でいられそうなので、法的な上限さえ外せればどんどん国債を売りつけられますよ、という状況にある、らしい。 日本はというと、純血主義を(ゆるく)守っているから、人口は世界最先端の減少傾向にあるので、将来の成長に期待して国債を買ってくださいといっても、今でも経済成長率一人負けの状態なのに、人口が減る局面でどうやって経済規模を増やすんですかという具合で、買い手がいない。今でも国債の買い手の海外比率というのはそんなに高くないらしいので、それを今後さらに伸ばしますといっても難しい。そうなると頼みの綱は国内の買い手になるんだけど、これまで世界最大の余剰資金を持ってきたゆうちょとか銀行は、今後は個人預金者が老後のために貯金をとりくず始めたりして、むしろ国債を売って現金化しないといけないような傾向に入ってくる。 そうなると、税金というキャッシュに手をつける必要があり、これは今まさに与謝野さんが余命を削る感じでライフワークとしている税制改革なのだけれど、はたしてこれから急速に減少していく労働人口で、急増する予定の一般歳出をまかないきれるのかどうか、かなり工夫が必要な感じになっている。基本は「体が動くうちは働きましょう」という方針なのだけれども、そうは言っても限度があり、いつかは大量の労働不能人口と要介護人口を抱えることになる。 で、最後の伝家の宝刀みたいなのが、大蔵省/財務省の外側を流れている、年金@厚生労働省とか、自動車道通行料@国土交通省とか、そういう特別会計の巨大な伏流水になっている。変わったところだと、日本赤十字の募金@厚生労働省だとか、電波使用量@総務省(旧郵政省)だとか、宝くじ@総務省(旧自治省)だとか、あとパチンコ@警察庁とか漢字検定@文部科学省みたいなのもあるらしいけれど、とにかくそういう「法律による強制力と密接な関係のある公益事業」みたいなお金の流れが非常に巨大で、そこに手を出せばかなりの問題が解決するという噂もある。 特別会計というのは、所得税@財務省や消費税@財務省といった一般会計と違い、サービスの提供に対する対価として、国民の自由意志によって支払われているという体裁を取っているので、国内のキャッシュフローに対して非常に大きなダムや取水堰を設置してもあまり苦情が出ないという、非常に優れた現金収集システムになっている。仮に民間企業が介入してきても、安全とか公益とかを理由にして法令を改定すれば、民間企業に競争と発展を負担させつつ、独占的地位は維持させるなどということも可能になっていて、持続性も高い。ここには非常に大きなキャッシュフローと、それなりのストックがあるため、いつでも抜けるこの伝家の宝刀があれば、社会保障費おそるるに足らずという説も繰り返し唱えられている。 ただ、このあたりに不用意に手を突っ込むと、なぜか自宅の前で「偶然」暴漢に殺されたり、あるいは非常に残忍で冷酷な手口で「自殺」してしまったり、逮捕起訴されて初犯なのに実刑判決を受け刑務所送りになったりと、不思議な現象が全国ネットで報道されたりしているので、やはり宝刀を抜くのは最終手段ということになるのだろう。結局、年金の問題は年金の範囲内で、医療費の問題は健康保険の範囲内で、それぞれ解決しなくてはならない。だから、将来の社会保障費を補償するために消費税率を上げるといっても、結局それが年金や医療費に回る可能性は低く、ゆうちょや銀行が取り付け騒ぎを起こして財務省が国際的に白い目で見られるのを避けるために、国債残高を減らすのに使われる可能性が高い。もちろんそのお金はインフレを防ぎつつ銀行口座を潤して、結局国民の老後資金にはなるのだけれど。 次に税金の累進性、つまり収入の多い人ほど税金の税額だけでなく税率も引き上げて、富の再分配をするという、ムハンマドさんも神様から「これだけはちゃんとやっとけ」と言われたという、長者から貧者への施しを社会的制度に組み込むというのが、普通の税金の仕組みになる。ただ、これをやりすぎると、経済を牽引する優秀な人がやる気をなくして海外に逃げてしまったりするといわれているので、貧富の格差が縮まるほどではなく、あまり広がり過ぎない程度に抑えるのが鉄則になっている。 日本の所得税@財務省などはこの鉄則を守り、世界でも累進性の強い税制となっている。しかし、こうした一般会計など国家予算全体の中ではマイナーな部分なので、収入に対して定率だったり、ひどいと定額だったりする各種特別会計のフィルターを通ることで、日本の(広い意味での)税制は、むしろ所得の低い人から所得の高い人に向かって所得転移が発生するという、世界でも珍しい逆累進性の制度になっているらしい。それでもあまり国民からの苦情が深刻にならないのは、欧米のように金額ではなく桁が倍も違うような天文学的な収入格差というのが日本ではあまり見られず、所得は周囲に遠慮しつつ緩い年功序列に従い、あとは税額の控除とか福利厚生とか法人資産の役員個人用途への流用黙認とか、そういう手段で報酬体系を組み立てていたので、あまり目立った所得格差が見られなかったということもある。 それから、年功序列というシステムのために若者が低収入で高い課税を受けても、そこから吸い上げられる資金は親世代に落ちているという家族内循環があり、親がいないなどという事態がない限り、差し引きの収支は保たれているような事情もあった。加えて、扶養者手当てや住宅手当など、仕事量より出費負担の必要に応じて給与を調整するようなシステムが働いていたため、逆累進といっても独身税のような形として婚姻圧力の一種となっていただけで、低所得者がいつまでもそこから抜け出せないという制度でもなかった。最近はこのシステムは徐々に終わりを迎えているので、年々「独身圧力」が高まってきている。これは未婚世代に限らず、離婚圧力としても同じように働いている。 で、ちきりんネタにもどると、貧しい人ほど魅力的に映る宝くじというのは、逆累進性の最も強い公的収入になっているのは、間違いない。宝くじは古くから「富くじ」といって、確率的に正しく設計し、ある程度規模を大きくすれば、何も生産しなくても確実に儲かる手法として知られており、国内では法令で許可された機関以外がこれに該当する商品を販売することはできない。商品についているポイントを集めて抽選というのが民間に許された限度いっぱいのもので、これも少しでも景品法に触れると行政指導などの処罰を受ける。 ただ、薄く広くというのは税制の一方の理想でもあるので、一発逆転の夢を売りつつ、社会保障の受益者からもあぶく銭を回収するシステムというのは、必ずしも悪いものではない。あとは、あんまり射幸性が高くなりすぎないように最大倍率に制限を設けるということが必要なのだけれども、日本はこの点で世界的にもかなり控えめで良心的な水準を維持しており、宝くじの買いすぎで借金まみれになって一家離散というような話は、まず聞かれない。むしろパチンコのほうがいろいろと問題視されている。 宝くじが貧者の税金というのは確かなのだけれども、税金の使い道が、貧者の救済よりも商業の発展(ひいては社長さんの生活の充実)のほうを向きすぎているという、取り方よりも使い方のほうに問題があるから、税金だと思うと気分が悪いのだろう。税金といえば貧者の味方という印象なら、なんだ税なのか、なら夢も買えるし困窮者も救えるし一石二鳥だな、といった感想になるはずなので、根本的なのはやはり使い道のほうなんじゃないかと思う。宝くじという仕組みそのものを批判するのはちょっと筋が違うと思うし、もし税というものを批判するのならば、やはり隠れ税であるところの強制加入による年金なども批判の対象にならなければいけない。 なんというか、ちきりん世代というのは、現行の年金制度が維持された場合にギリギリで受益者となる世代なので、そういう立場からのポジショントークともとらえられかねない。たぶんちきりんにそういう意識はないのだと思うけれども、年金制度に対する苛立ちよりも信頼が勝っているというのは、やはりどうしても親があって子がなくて、なおかつ自分も年金に頼れるというポジションが影響しているのは否定できないと思う。実は私のような団塊ジュニアでも最後の黒字世代で、トントン世代がもう少し下にいるのだけれども、もっと若い世代は不公平感や負担感をひしひしと感じていると思う。コドモたちの世代になると、彼らが年金の受給年齢に達するまで年金制度が現行に近い形で運用されているなどという可能性は、全く考えられない。 という具合で、自分と違うポジションからの眺めって面白いよな、という面白くもない結論でした。たぶん、私と同じ団塊ジュニア世代でも、家族構成の違いによって、またいろいろと意見は変わってくるのだろう。 化石資源云々の話も突っ込みどころが豊富で(批判的な意味じゃなくて、この話題は各種の仮説を立てるのが楽しいので)いじりたいところではあるけれども、長くなったのでこのあたりで。
by Antonin
| 2011-08-01 23:16
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Comments(2)
リクエストにお答えいただきましてありがとうございます。やべえ、政治ネタわかんねえ。
34歳ワーキングプア未婚祖父母健在という自分には、確かに将来は暗いものですね・・・。政治の改革なんかで改善するのでしょうかこれ。 年金支払いを全部宝くじ勝負したほうが、なんとなく納得のいく末期を迎えられそうではあります。
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by
antonin at 2011-08-04 11:49
>いしにょ さま
どもです。逆に、こういう社会規模の事象って、政治以外に解決方法がないと思うんです。それに、猫に鈴を付ける、みたいな打開策はいっぱい出てるんですよね。ベーシックインカムとか。 実行力という意味では、やっぱり切実な世代が社会の主流になってくるまでは、楽観的な世代に潰されて終わりなんだと思います。グラッスス兄弟がヘタレでカエサルが英雄だったというよりは、スッラみたいなのがある程度死に絶えてからじゃないと、本格的な改革ってのは実行できないんじゃないかと。 ありそうもないことを信じられるというのはひとつの才能であって、年金だろうと生保だろうと宝くじだろうと、それに投資することで安心感や期待感(あるいは後腐れなきオワタ感)を持てれば、もうそれで問題の半分くらいは解決しているような気がしないでもありません。信じるものは幸いである。信じないものは、どうしましょうか。
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