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簡単なこと、というのは、世の中にたくさんある。息を吸うとか、指を曲げるとか、10まで数えるとか。あるいは、朝の15分で1日の仕事の段取りをつけるとか、割り込み仕事が入った時に、その優先順位を考えるとか。そういうのは「たいして難しくないこと」で、もしもそういうことができないのだとしたら、一時的な病気か、あるいは単にスキルを学んでいないから、と思われる。 が、意外とそうでもない場合がある。ある種の先天的な形質であるとか、体の一部の不可逆的な損傷などによって、そういう「簡単なこと」ができない人がいる。そして、それが全くできないのだとか、できない理由が傍目に明らかな場合には、まだ救いがある。が、意外とそうでもない場合が多い。中途半端にはできてしまうのだが、ひどい苦労が伴う、だとか、内部的には理由があるのだが、外部からその理由を知ることができない、などの事情で。 そういう場合、できないことが「簡単なこと」であればあるほど、それができる人にはあまりに自然で簡単に感じてしまうため、なぜできないのか、あるいはできないなんてことがあるということそれ自体が、なかなか理解できない。そして、そういう簡単なことができない当人にとっても、その理由の本当のところが理解できていなかったりする。 そういうことを、現代社会は人間生活の「標準(standard)」として多々組み込んでいる。その標準から外れる人、特に、全く疑いの余地なく外れる人ではなく、ぎりぎりこぼれ落ちる間際で踏ん張っている人にとって、「どうしてそんな簡単なことも出来ないのか」という常識的な感覚は、非常に大きな苦痛になる。 そういう、標準の縁にいる個体を遺伝的にふるい落とすことで遺伝的平均値を高め、より高度な能力を身につけるというのが進化論の根本原理でもあり、また人間がこんな高度な生物になった原動力でもある。だから、人類の進歩のためにはそういう劣った個体を優遇する理由などないのだが、どんなに汚い技を使ってでも生き残る生存競争をするのが生物の定めでもあるので、際にいる個体も、なんとか理由を見つけて自分を生き残らせる戦術を使わなくてはならない。 「悪平等」と言われる思想や制度は、そういう際にいる人間たちによる巧妙な生存戦術が昇華したものであるようにも思える。社会システムのパフォーマンスに悪影響を与える平等は、標準個体にとっては全くの害悪に見えるが、辺縁個体にとっては自己の生存可能性を高める支柱でもある。簡単なことが難しいということを、「じゃあ生きるのやめれば?」と言われずに、標準個体たちの矜持あるいは美的感覚に訴えて理解させていくということが、辺縁個体にとっては必須の生存戦術になる。 難しく、そして卑賤なことでもあるが、そうでもして生き残らなければ絶滅するだけであって、そうである以上はそれをしなければならないというのが生命の掟でもある。その辺りの汚さを理解して受け入れていくのが老成ということで、嫌なことではあるけれども、死なずに無事老成できた辺縁個体が引き受けるべき運命でもあるのだろうという気はする。
by antonin
| 2013-03-04 03:52
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