安敦誌


つまらない話など
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ホット&クール

「ファスト&スロー」上巻をやっと読み終える。読書の遅い奴は仕事も遅い。

しかし、"Thinking, fast and slow" だと本書の論旨を的確に要約しているけれど、「ファスト&スロー」だと意味がわからない。直訳すると「考えること、早いのと遅いの」という感じになってしまうが、もうちょっと啓蒙書っぽく「早い思考と遅い思考」でもちょっともっさりしている。新書風タイトルにするなら「論理思考の9割は錯覚」とか「人間の思考は怠惰と粗雑がすべて」とか、そんな感じになるのだろう。

どうせこの手の本は書評とか口コミで売れるのだから、タイトルは適当でもいいのかもしれない。内容は、私個人には体感的に当然と思えることを、実験的に検証した研究者がいたというあたりが新鮮だった。直感が理論を受け付けないということは、直感的に自明な感じがする。まあ、その理解って当然に危ういのだけれど。

「ファスト&スロー」のまねをして、「ホット&クール」という話を書いてみようと思ったが、どこから説明を始めるのかでちょっと困ってしまう。内容的には "Thinking, hot and cool" となって、人間の思考には温度の高い思考と温度の低い思考がある、という話にしようと思ったのだけれど、その考えのもとになっているのがボルツマンマシンなので、ボルツマンマシンとはなんぞや、とか、そもそもホップフィールドネットワークみたいな連想記憶タイプのニューラルネットワークの説明あたりから入らないといけないような気もする。

ボルツマンマシン

ホップフィールドネットワーク

フェルマーの大定理のストーリーに登場する志村さんと谷川さんだけれども、志村さんはたぶん数学者らしく温度の低い思考をするタイプなのだと思う。一方の谷川さんは、比較的高温の思考をするタイプで、数学者としては異色の人物だったのだろう。志村さんが谷川さんを評して、彼は間違いが多いが創造的な間違いをする、というような言い方をしていたように記憶している。たぶんそういう傾向があったのだろう。

ボルツマンマシンによる学習では、温度パラメータを上げて一度熱い思考をしてから、徐々に温度パラメータを下げて冷たい思考へ移行するという、「模擬焼きなまし (simulated annealing)」というのをする。これは、ブレーンストーミングによって雑多で時に荒唐無稽なアイデアを出して、あとから冷静になってアイデアの枝刈りをしていく作業に似ている。

これを一人の人間がやるにはちょっと難しいところがあって、普通は常日頃から思考の温度が高い、エントロピーの大きい人間が常識外れの発想力を使って大局的な最適解を「発見」し、次いで思考の温度が低い人が精度の高い推論力を駆使して真の最適解を追求していく、というパターンが多いように思う。

私やちきりんのような人は思考の温度が高く、普通の人には難しいような発想の飛躍ができるが、細かいところは勘違いだらけで、論理推論の精度が低い。一方、アスペルガータイプの人は思考の温度が低く、普通の人が気にも留めないような些細な間違いを精度よく検出し、非常に緻密な推論を行う一方で、普通の人が難なく乗り越える論理的障壁を乗り越えられず、発想が硬直的になる。

それぞれに得意不得意はあるが、問題解決のフェーズを切り分けることでその能力を組み合わせれば組織として強そうだな、ということを思った。そういう普通じゃない奴らを統合する強烈な知性と情熱を持ったリーダーでも出てこないと、なかなか実現は難しいだろうけれども。

先天的に思考の温度パラメータが高い傾向、あるいは低い傾向というものが個人差としてあるのだろうと思う。けれどもその原因が何なのかといわれると難しい。海馬の大きさが一時的なイメージ保持力に寄与して、それが強い人は抽象概念のイメージが安定的に持続して思考の温度が低くなるが、海馬が弱い人は温度が高くなる、という機構も考えられるし、神経伝達物質や大域的な神経線維の比率などで興奮パターンの疲労が早く訪れるために時間的なパターン間の相関が弱くなって思考の温度が高くなってしまうという機序も考えられる。このあたり、脳科学の研究が進まないとよくわからない。

将来的にこういう脳の特性パラメータがいろいろと計測可能になって、それぞれの適性に見合った仕事が選べたりするようになると幸せなんじゃないかと思う。不得意なことを努力するのもある程度は有効だが、どちらかと言えば適材適所で長所を売り物にしてもらうほうが、本人も社会も嬉しいんじゃないかと思う。まあ、偏差値と同じで、あんまりパラメータ判定に振り回される社会になってもそれはそれで不幸なんだろうけど。

アメリカあたりではポストヒトゲノム計画として、脳神経のマッピングプロジェクトが立ち上がったらしい。技術的に未熟すぎず、かといって成熟もしておらず、ヒトゲノム計画を立ち上げた頃と同様に、とても良いタイミングだと思う。ヨーロッパにもHuman Brain Projectという大規模な神経シミュレーションプロジェクトが存在するらしい。日本でも何かこのあたりに追従していく動きはあるんだろうか。100ます計算とかアハ体験とかが関の山だったりすると寂しい。
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by antonin | 2013-04-17 23:05 | Trackback | Comments(0)
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