安敦誌


つまらない話など
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放射能問題はほぼ終わっている

いまさらこんなところで書いてもあんまり意味が無いかもしれないけれど。

福島第一原発の事故で環境中に放出された放射能による、一般市民の切迫した危険というのは、もう終わっていると考えていいだろうと思う。先日の内部被曝量調査の結果を受けて、という面もあるし、理論的に、ということもある。

【放射能漏れ】セシウム、99%で不検出 福島の内部被曝、チェルノブイリを大幅に下回る - MSN産経ニュース

福島第一原発事故が終息したかというと、もちろんそんなことはない。事故現場ではまだ難しい対応が続いているし、相変わらず高い線量の環境中で働く作業者の方たちの安全をどう守っていくかという難しい問題もある。ただ、あれだけ派手な事故を起こしてしまい、事故現場の周囲は人が住めない状態にまでなってしまったので、原発の近くでヒヤヒヤしながら今も生活している市民、という状況は考えなくても良くなっている。

チェルノブイリ原発事故の調査などから、原子炉の放射性物質が環境に放出されて一番リスクが高いのは何かというと、子供の甲状腺ガンだという。子供は甲状腺の活動が活発で、また甲状腺が活動するには大量のヨウ素が必要になる。また、稼働中の原子炉では様々な放射性物質が発生するが、その中にヨウ素131というものが含まれる。このヨウ素131の半減期が8.0日という絶妙の値を持っているため、ガンの原因になりやすい。

同位体というのは、原子核の中の中性子の個数が違うので重さは異なるのだけれど、陽子の数は同じなので、それを取り巻く電子雲の性質もほぼ同じになり、したがって化学的性質もほぼ同じになる。ただし原子核の性質は随分と異なっていて、安定したものもあれば、不安定で勝手に壊れて陽子の個数が代わってしまい、別の元素に化けてしまうものがある。この、勝手に壊れる現象を崩壊といい、崩壊しやすい同位体を放射性同位体という。

この崩壊が起こるときに放射線が放出されて、この放射線がDNAやRNAを傷つけることが病気の原因になる。ヨウ素131の化学的性質は安定同位体のヨウ素127と同じ化学的性質を持っているので、甲状腺に取り込まれやすい。そして、甲状腺の中に留まりながら、パチパチと高速電子線であるベータ線を出しながらキセノン131に化けていく。このとき、崩壊スピードが問題になる。

同位体が非常に不安定で、崩壊スピードが早い、つまり半減期が短い場合というのは、物質量のわりに放射線の発生量は多いが、同位体が崩壊によって急速に消滅していくので、原子炉での核分裂反応が終わってから人体に吸収される前に、自然に減ってしまうので問題になりにくい。また逆に、同位体が比較的安定で崩壊スピードが遅く、つまり半減期が長い場合には、よほど高濃度で吸収されない限り単位時間あたりの崩壊数というのはあまり大きくならず、したがって放射線によるDNA損傷よりも酵素によるDNA修復スピードのほうが早くなる場合が多い。この場合、ガンにはなりにくい。

ヨウ素131の場合、崩壊は活発だが拡散して人体に吸収されるまでの期間に急速に減ってしまう程には崩壊が早くないという、絶妙の半減期を持っている。しかも、ヨウ素という人体が利用している元素の化学特性も合わせ持っている。これが子供の活発な細胞活動と相まって、ガンの原因になる。

そういうヨウ素131なのだけれども、セシウム134などの、年単位の半減期を持つ放射性物質に比べると、かなり半減期は短い。8日で半分になるので、16日後には4分の1になり、80日後には約1000分の1にまで減少する。原子炉での核分裂反応停止から800日近く経過した現在では、およそ1,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000分の1にまで減少している計算になり、自然界には福島第一原発由来のヨウ素131はもう存在しないといってもいいだろう。

なので、日本の子どもたちを甲状腺ガンから救おうとすれば事故後1ヶ月ほどの対策が全てであり、その後は良くも悪くもどうしようもないということになる。それでいてガンが発症するのは事故後4年を経過したあたりからだというから、今はもう、2年後の発症開始時期に備えて検診を怠らないことくらいしか対策の打ちようがない。

一方のセシウム134などはようやく最初の半減期を迎えたばかりで、まだまだ残存量は多いだろうし比較的にしても物質量あたりの放射線量は多い。しかし、その化学的性質というのはアルカリ金属の性質であり、ナトリウムやカリウムに似て、水に溶けやすい。人体は神経細胞や筋細胞などでナトリウムやカリウムを必須材料として利用しているが、そういうものを化合物として蓄積するというよりは、常に水とともに流れ出してしまっており、継続的に摂取しないとたちまち死んでしまうような使い捨て的利用をしている。

セシウムも同様で、食物中の水分も含め、飲食物に溶け込んだセシウムを摂取する機会は多いが、摂取した分とほぼ同量が体外に流れ出していくため、体内で高濃度になるということは起こりにくい。なので、これも高濃度汚染された食品を継続的に食べ続けたりしない限りは心配する必要がない。ストロンチウム90はマグネシウムやカルシウムに似たアルカリ土類金属なので骨などに蓄積しやすいらしいが、そもそもヨウ素やセシウムほどには環境に放出されやすくないらしく、あまり目立った観測報告は聞いたことがない。実はとてもではないが発表できないくらい汚染されていて箝口令が敷かれている、という陰謀論すら聞かないので、これもあまり心配しなくてもいいのだろう。

ということで、少なくとも一般市民はもう、原発事故による放射線を気にしなくてもいい段階に入ったといえる。

ただまあ、この程度の汚染で済んだというのも、早春の福島だったからだよな、という感想はある。チェルノブイリ原発は内陸部にあって、風向きがどうあろうと、放射性物質は陸地に降り注いだ。陸地というのは固体でできているから、一度降り積もった放射性物質は、崩壊で消えたり、水に流されたりしない限り、いつまでもその場所に留まる。たまたま高濃度に堆積した地区は、いつまでも高い放射線量を引きずるだろう。水に流されるといっても、それは地下水として長く伏流したりもする。

しかし福島第一原発の場合、かなりの割合で放射性物質は太平洋に降り注いだ。小笠原でもマリアナ諸島でもなく、ほとんど陸地のない北太平洋に降り注いだ。それも、遠浅の干潟などではなくて、急速に日本海溝へ沈んでいく深い海の上に降り注いだ。海というのは液体でできているから、水に溶けやすい物質は急速に撹拌されて薄まり、水に溶けにくい物質は急速に深海へ沈んでいっただろう。こういう幸運があって、日本の国土の汚染がこの程度で済んているのだろうと思うと、少しだけ背筋が寒くなる。

爆発した原子炉から継続的に放射性物質が流れ出ている期間、ほとんどの時間は太平洋へ向かって風が流れていたが、たまたま数時間だけ南東から北西へ風が向いた時間があって、それで福島県は汚染されてしまった。もしも爆発事故を起こしたのが東日本大震災の福島第一ではなく、新潟地震の柏崎刈羽だったとしたら、東日本はもっとひどいことになっていただろう。日本はまた「神風」に救われたのかな、という気がしないでもない。

なぜ日本の原発関係者があんなに事故想定をタブー視するようになったのかというと、理性的な理屈がほとんど通用しない反原発運動の人たちが執拗に騒ぎすぎたせいであり、福島第一原発が爆発してしまった原因の一端は反原発運動にもあったんじゃないかと疑っている。原子力技術者だって人の子であり、余計な面倒には巻き込まれたくないと思っただろうし、感情的に原発を目の敵にする人々の存在が正常なリスク対策を闇に葬る原因になったのだとすると、強引に原発を推進した人たちと同じくらい、無茶な反原発運動をしていた人たちの罪も重いように思える。

脱原発は総合的なエネルギー問題としてもう少し息の長い議論が必要になるから、今は原発にばかりギャーギャー言っていないで、少しでも津波被害のあった地域の復興を早めたり、そういう地域で取れる産品を積極的に購入したり、同じ騒ぐのでもそういう活動にもっと精を出すべきなんじゃないかと思う。
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by antonin | 2013-04-20 02:34 | Trackback | Comments(0)
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