安敦誌


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創発について

そういえば、『生命起源の科学哲学』を読んだ。 - finalventの日記

↑ここいらへんを読んでの感想。『生命起源の科学哲学』は読んでいない。感想の感想。

創発というのは、概念としては別に面白くもなく当たり前のことを言っているだけのような気がする。1ビットでは2種類の状況が区別できる。8ビットあったら、立っているビットの個数を数えて0個から8個までの9種類の状態が区別できる、というのなら創発は起こらない。が、実際は各ビットに位取りの重みを与えて、順列によって2の8乗である256種類の状態を区別できる。16ビットなら65,536種類、32ビットなら4,294,967,296種類の状態が区別できるようになる。

単独のビットの可能性は2種類しかないのに、他のビットの状態によって1や0がそれぞれ複数の状態として区別されるようになると、状態数は指数関数のオーダーで爆発的に増大を始める。この指数的に爆発する状態数の中から、確率は低くても重要な性質を持った状態が出てくるかもしれない。しかもその重要な状態がある程度の永続性を持つようになると、微小確率は累積し、いつか必ず目に触れる水準にまで上がってくる。

それぞれは単純な要素が、置かれる状況によって意味が変わるというのが創発の入り口になる。そして個々では起こりえなかった状況が状態数の爆発によって無視できない確率で発生しうる、というのが創発現象の意味するところだろう。32ビットでは本来4,294,967,296種類の状態しか区別できないけれども、それだって解釈系が符号付き整数と見るか、単精度の浮動小数点実数と見るかによって変わるし、もちろん他の解釈だって無数に存在しうる。

ただ、創発というものが理論的に美しく示されうるのかというと、それはまだしばらく無理なんじゃないかという気もする。原理は示されたが、道具として使える段階には程遠い。四色問題の証明はその端緒にあるように思えるけれども、本当に創発現象を舐め尽くそうと思ったら、グーゴルプレックス規模の大数を概数ではなく厳密な整数値として手軽に扱えるくらいの数学手法がないと、ちょっと難しいだろう。グラハム数は宇宙がいくつあっても足りないという感じなので、たぶんそこまでは要らない。

ただ、精妙な世界の根本原理が創発現象なのだとして、その全貌をそのまま人間が理解できるとも思えない。たった32ビットの状態空間だって、人間の手には負えない。「1から32までの数字を全て書き出して、並んだ数字を眺めて考えてみよう」というのは人間にも十分実行可能な作業だが、これが「1から4,294,967,296までの数字を全て書き出して、並んだ数字を眺めて考えてみよう」となると、もうこれは人間の手には負えない。1秒に1個の数字を書いて1日12時間年中無休で作業し続けたとしても、10万年近くかかるし、もしそういう作業をやったとしても、あまり深いインスピレーションは湧いてこないだろう。もう忍耐力とかそういう問題ではなくなってしまう。

なので、現実的にヒトの小さな脳漿で世界の現象を理解しようと思えば、どうしても分析的な手法に頼らざるをえない。創発が起こるということは、逆に言えばどんなに複雑な現象でも分析的に捉えれば理解可能な水準が出てくる可能性があるという希望にもなるし、実際に単純な要素の挙動を厳密に捉えることができれば、複雑な総体の挙動も、予測までは困難でもおおまかな推論くらいはできるようになる。

32ビットのデータを1ビット単位に分解すると、もはや元の意味がわからなくなる。このようにあまりに分析を進めすぎるとそれはそれで総体の挙動から乖離しすぎて意味が捉えられなくなるのだけれど、加算のときに隣のビットとどのような相互作用をするか、というような話であれば、全加算器の複雑度で十分説明することができる。

ネットワークのレイヤのように、究極の微小要素から全体の複雑系に到達するまでに、理解可能な相互作用単位を見つけることができる水準が、スケール別に何段階かに分かれて現れてくることも多い。本当にそういう水準がなくて、個別要素が全部個別に相互作用して全体の性質を決定することもなくはないだろうが、そういう場合は全体の挙動がカオティックになりすぎて、あまり人間の探究心の対象となることはないだろう。人間が見て興味深くなるような挙動を示す相互作用の系では、これは単に経験的直感だけれども、だいたい何層かのサブユニット構造を見つけることができる。

創発現象に懐疑的という考え方は理解しづらいが、フェルマーのディオファントス問題よりつかみどころがない、という意味では同意できる。簡単そうだけれど、有用な答えに達するには数百年を要する面倒さを孕んでいる可能性はある。問題の本質を、超大型のコンピュータには理解できるが、生身の人間では脳細胞数の制限によって理解できない、なんていう複雑度の問題の解を目の前に見せられてしまったら、人類はどうしたらいいのだろう。遺伝子でもいじって脳を大型化させるしかないんだろうか。それとも理解した気分になれる心理マジックでこの先数百年も生き延びていけるもんなんだろうか。
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by antonin | 2013-04-27 01:27 | Trackback | Comments(0)
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