安敦誌


つまらない話など
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続・床屋談義

一つ目の大学を卒業するときに、体育系サークルの部室の前で卒業生と思しき連中が花束を持っているのを見て、こういうときだけは体育会系が羨ましいな、みたいなことを言ってしまった。後日、催促したような形になったが、サークルにいた1年次の女の子2人から花をもらった。枯れるのを待つだけの切り花が嫌い、みたいなことは酒の席で漏らしていたんだろう、2人とも鉢植えの小さな花をくれた。この鉢植え2つは、初めて一人暮らしするアパートでの生活で、いい慰めになった。

その後輩のうち一人は話すと長くなるので置いておくとして、もう一人のくれた花がアッツ桜という花だった。名前の由来を調べると、ベーリング諸島のひとつ、アッツ島の名前を引いたものだけれども、この花の原産地は雪も積もらせることもできない寒風吹き荒れる島ではなくて、南アフリカのあたりだという。当然こんな名前で呼ぶのも日本だけらしい。

アッツ島というのは、ミッドウェー海戦の少し前に、キスカとともに日本軍が占領し、航空基地を整備した場所らしい。ミッドウェー海戦がああいう結果になって、キスカとアッツも撤退必至だったのだけれども、東にあってアメリカ本土に近いキスカのほうが先に落とされると、日本軍はそう考えていたらしい。キスカのほうは、深い霧という天候にも助けられて、現代人から見る旧軍の印象に反して、極めて人命重視の完璧な撤退に成功したらしい。そして、無人になったキスカに上陸した米軍は、現代人から見た米軍の印象に反して、全く言葉の通じない敵である日本軍への恐怖から、無人の島に対してかなり恥ずかしい上陸作戦をしてしまったらしい。このあたり、ドナルド・キーンさんの自伝的作品にも記述が出てくるという。

一方のアッツは、日露戦争時代から軍属という指揮官が率いる艦隊による救出作戦が決行されたものの、この司令官が当時の帝国海軍のセオリー通りの安全策を取ったため、艦隊は途中で引き返してしまう。そしてアッツはキスカと同時に攻められ、結局二度目の救出作戦が行われることはなかった。ベーリング諸島撤退のタイミングは終戦までまだ間のある時期だったので、この司令官は現場を放逐されたものの、南洋庁がらみの閑職に就いてそれなりに恵まれたその後を送ったらしい。

で、アッツ島(熱田島)は、戦時中の東京でもちょっとした神事が執り行われるくらい、壮絶に玉砕したという。このアッツ島の玉砕はひとつのロールモデルになって硫黄島の戦闘にも影響したらしいが、とにかく最後の一兵卒に近いところまで戦い抜き、ほぼ全滅となった。日本語の文脈ではアッツ島の全滅は日本人の生真面目さと自己犠牲的な強さを示す美談となったのだけれども、米軍から見ると、戦闘開始前から完敗が予想されて士気が下がって当然という文脈で、気味の悪いほどの善戦を見せる日本軍への、職業軍人としての賞賛と、尊厳ある人間としての軽蔑が入り混じった、奇妙な畏怖の感情で語られるものらしい。

そしてその後はサイパンでも硫黄島でも沖縄でも、文明国の先輩であった米軍は、文明国の新入りである日本人たちが奇妙な土着信仰の表れのような異様な死に様で斃れていくのを目にしていくことになる。当然そこでも奇妙な畏怖の感情が強まって、最終的にはこの敵と面と向かって戦うべきではないという結論になる。その結論が高高度爆撃機からの焼夷弾投下であるとか、新型原子爆弾の投下であるとか、そういう戦い方を導いていく。焼夷弾や原爆でも落とさない限りまともな勝ち方はできないというところまで米軍を追い詰めたのは、おそらく熱田島や硫黄島で玉砕した英霊たちなのであって、これは日本の普通の市民からすると色々と複雑な気持ちにならざるを得ない。

日本人は負け方を知らないというのは確かにその通りで、いやまあ、知ってはいるのだけども、それはキリスト教圏の内部で行われていたようなノーサイドに至る負け方ではなくて、生き恥をさらすくらいなら潔く散るという日本的な負け方でしかない。事業で失敗したら親族を巻き込んで路頭に迷うし、会社に損害を与えたらネクタイで首を括ったりする、今も脈々と受け継がれる日本人らしいスタイルになる。これは、アメリカ的な文脈で言えば、「負け方を知らない」という話になるんだろう。ヨーロッパ人がこのあたりについてどういう感覚を持っているのかというのは、正直よくわからない。アメリカ人に多いのが上京した三男坊のメンタリティだとすると、ヨーロッパ人の中には敢えて先祖伝来の地に残った惣家のボンのメンタリティもあるので、意外に地方在住の日本人に近い部分もある。

google earthなどを見ると、アッツ島の比較的高精細の空撮映像を見ることができる。現在のアッツ島は合衆国最西端の領地となっていて、ちょっと先にはロシア最東端の島がある。こちらは自然動物の楽園となっていて、生態学の研究者がときどき訪れる程度のアクティビティになっているらしいが、アッツ島には現役の米軍基地が存在する。日本軍が整備したらしい4本の滑走路のうち2本は放棄されているが、2本はそれなりに使える状態で保守されている。

そして空港から延びる道路を辿っていくと、途中からは痕跡のようなものになってしまうものが多いのだけれど、その道に沿って、兵舎やタコツボと思しき遺構が点々と並んでいる。アッツ島のその部分はもう放棄されているのだろう、日本軍が加工した地形がほぼそのまま残っている。そういう気味の悪い土地で、米軍のごくごく小さな基地が今でも運用されているらしい。

生き馬の目を抜くビジネスの世界で、孫子を引いて「巧遅は拙速に如かず」みたいなことが語られる。確かに初動においては拙速が必勝なんだけれども、ある程度の持続戦になると、結局は巧遅が追いつき、そして追い越していく。フェーズを正しくとらえて、それに合わせて随時変えていくということなんだけれど、大人というのはそうそう変われない生き物で、拙速が得意な人はいつまでも拙速だし、巧遅が得意な人は最初からずっと巧遅で、結局は適材適所のマネジメント力でそのあたりをカバーするしかない。

憲法のアレも、改憲を断固として受け入れない頑固者がいる以上、現実にはああした解決しか方法がない。「自衛」というなら、「自」とは何かと問うとき、国家と違って自明でない「集団とは何か」の定義がないのは非常に危険だと思っているが、それはまた水準が違う話だろう。私は、原発を安全神話の牙城にして、結果として爆発にまで追い込んだ原因の半分は頑固で聞く耳を持たない反原発派にあると思っているし、憲法が行政解釈であんなboundの外まで引きずられてしまった原因の半分は、やはり聞く耳を持たない護憲派にあると思っている。で、それはそれで、ある視点から見ればしっかりとした正義なのだけれど、やりすぎたために墓穴を掘っているし、そして事後でさえ自分たちに罪はないと思っているあたり、非常に罪深いと思う。

祖国のために戦った父祖の気持ちに報いよ、みたいな抒情的な考え方はあっていいとは思うけれども、結局彼らは限度を知らなかったために日本を滅ぼしかけたという面もある。馬鹿にするわけではないけれども、その死を無駄にしないためにも、本気で戦闘をするつもりなら、負け方のほうも史実からしっかりと研究しておいたほうがいいのではないかと思う。

アッツ島 - google map

アッツ島の戦い - Wikipedia

▶ 玉砕 ~甦らぬ英霊二百万~ アッツ島・キスカ島 - YouTube

ねずさんの ひとりごと アッツ桜

戦争画リターンズ

床屋談義 : 安敦誌

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by antonin | 2014-07-07 02:48 | Trackback | Comments(0)
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