by antonin
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あらまぁ、もうこんな時間。今日は8時には寝るつもりだったのに。 3/2進法はまたまとまった時間が取れたら続けます。 -------- 昔、真空管というものを使っていた。似たような原理のものは現在でも使われているが、管の中は真空、もう少し正確に言えば空気を減圧したものではなく、希ガスなどの不活性ガスを低圧充填して利用しているので、真空管ではなく電子管と呼ぶのだという。従来放送波送信器用などの高周波高出力終段増幅器などに大型の電子管が使われていたが、最近はそうした分野でもソリッドステート(半導体)化が進んでいるという。極高周波では進行波管という特殊な電子管が衛星通信分野などで利用されているともいう。このあたりは詳しくないので確かではない。 トマス・エディソンが発明した電気照明装置は"electric bulb"と呼ばれ、「電球」と和訳された。ガラス球のなかで細い導電性繊維(フィラメント)が数千度に加熱され、黒体輻射により可視光を発する。数千度のフィラメントは、空気中では酸素の影響によりたちまち燃え尽きてしまうため、ガラス球の中は真空にされた。またその後ではあるが、真空中ではフィラメント物質がわずかずつ昇華して散逸するので、不活性ガスを充填することでフィラメントの昇華を抑え超寿命化する技術が開発された。この電球という装置は、真空管の父親である。 またウィリアム・クルックスが研究していた、真空中で高電圧を印加したときの挙動を観察する装置は、現在日本ではクルックス管と呼ばれている。これは一般には"Cathode Ray Tube"と呼ばれており、和訳すると「陰極線管」となる。陰極からまっすぐに放射する未知なる線の研究は当時大変興味深く、ある条件では線自体が発光し、またある条件では線が当たったガラス面が発光した。ヴィルヘルム・レントゲンがX線"X-Ray"を発見したのも、陰極線管を使った研究の中での出来事だった。 そして陰極線管のガラス発光面にさまざまな物質を塗りつけて陰極線を観察しやすくし、また陰極線の進路に電磁界を与えることによりこの陰極線が進む向きを変えるという研究をしていたのが、カール・フェルディナント・ブラウンであった。その名は私たち日本人になじみの深い「ブラウン管」として定着している。"Cathode Ray Tube"の頭文字をとるとCRTとなる。これらの陰極線管が真空管の母親である。 そして、フィラメント電球と陰極線管はガラスの中で幸福な結婚をし、プレートやグリッドという優れた発明によって、素晴らしい装置、世界初の能動素子である真空管を産み落とした。はじめに熱電子を効率よく発生するフィラメントカソード(陰極)と対向するアノード(陽極)だけを持つ二極管が誕生した。これは電流を一方向だけに流し、半導体でのダイオードに相当する。次に、両極間に網目のグリッドを置いて電流量を調節しようとしたが、この応答速度が恐ろしく速く、結果として音波や電波といった高周波信号を増幅できることが明らかとなった。 そしてさらに高度な多極管も生まれるのだが、それとは別に、真空管の出力信号が振り切った状態ではスイッチング素子として利用できるのだが、このスイッチング素子によってブール代数演算が可能であるという、恐るべき論文が発表された。それは、のちに情報理論の父となるクロード・シャノンのマスター論文であった。ブール代数演算が可能であれば、それを二進数と解釈すれば一般代数計算が可能であることを指し、また命題論理値演算と解釈すれば推論や判断が可能であることを示す、恐るべき内容だったのである。 そして第二次世界大戦末期から1940年代後半にかけ、数台の真空管式電子計算機が英米で作られた。ジョン・モークリーが発案し、J.プレスパー・エッカートがエンジニアリングした世界初のフルディジタルコンピューターENIACは、ワイヤードロジックによるプログラミングを採用しており、性能は優れていたが使い勝手は悪かった。そこでENIACの開発スタッフは、ロジックの動作遷移をデータ化してメモリに読み込む、ストアドプログラム方式を発案した。この方式は次期機種であるEDVACで実現されたが、それに先立ちこの方式をスマートな論文にまとめ、当時軍事機密であったEDVACの情報を独断で発表したのが、あの天才数学者ジョン・フォン・ノイマンであった。 ところで真空管の話に戻るが、日本語で「真空管」と呼ぶのは"Vacuum Tube"の訳であり、母方である"Cathode Ray Tube"の姓を名乗っている。しかし、別の流儀では"Vacuum Bulb"と父方の姓で呼ぶことも確かにあったのだという。これを訳すと「真空球」となってしまい、日本では使われていないように思うが、間接的には"Bulb"姓も日本に輸入されている。 昔、無線の増幅器やオーディオの増幅器に使用されている真空管の数は「球」という単位で数えられていた。6本の真空管を増幅に使っていれば、6球式増幅器となる。ちなみにアンプとは増幅器と訳される"Amplifier"の音訳の略語である。 時代が下って半導体全盛の世の中になると、アンプはトランジスターで構成されるようになった。すると、今度は6球式ではなく、6石式と呼ばれるようになった。シリコンは珪素の単体結晶物質であり、珪素は通常二酸化珪素という形で自然界に存在している。二酸化珪素というとなじみがないが、大きな純結晶は水晶と呼ばれ、小さな結晶は石英と呼ばれる。特に石英はそこらに転がっている火成岩の主成分のひとつであるから、こうしたところからシリコンが石と呼ばれることになったのだろう。 そして、「石」という単位はつねにトランジスタの個数を表す。ところが、プレーナICとフォトリソグラフィという画期的な技術により、トランジスタは個別の素子ではなく、シリコンチップに描かれる模様の単位となってしまった。そしてそのサイズと個数は、Intelのゴードン・ムーアが発表した、いわゆる「ムーアの法則」というロードマップに沿って、恐ろしいことに30年が経過した今でも微細化と大規模化を継続しており、その規模の比は10の6乗を超えるまでになってしまった。 最近よく目にするIntelのCore2 Duoでは、キャッシュ容量にもよるが、約3億個のトランジスタを形成しているという。「このパソコンは3億石式中央演算処理装置を載せている」と言ってよいものかどうか。3億のトランジスタが描かれているとはいえ、それは結局バカに性能のいい1石式なのではないかという気もしてくる。 もう、コンピューターの手を借りなければコンピュータを設計できない時代になって久しい。昔は低消費電力だが遅くて時計くらいにしか使えないと言われていたCMOSゲートも、今やミリ波の周波数も扱えるようになり、代わりに大きな発熱に苦しんでいるのだからわからないものである。高性能・高消費電力の流れを苦々しく見ていたが、電力効率がプロセッサの指標として見直されてきており、胸をなで下ろしている。これからどういう方向へ進むのか想像もつかないが、それくらいのほうがきっと楽しいのだろう。
by antonin
| 2007-02-07 03:41
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Comments(9)
Tracked
from 真空管アンプ激安通販
at 2007-04-20 21:53
タイトル : お洒落な美しい真空管アンプ graf KGアンプ
【graf KG-アンプ】 真空管アンプの開発・制作、オーディオ機器のコンサルティングを行う小松音響研究所と大阪を拠点に活躍するクリエイティブユニット、grafにより誕生した 真空管アンプ「KG-アンプ」です。 3本の真空管の美しさを最大限に生かした、i-podなどと合わせても..... more
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B705
at 2007-02-07 19:11
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数年前に、簡単な真空管アンプを作ったよ。・・見ているだけで泣けてくるんだよね・・まして中島みゆきをかけると、鼻水もんだよね・・。
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antonin at 2007-02-07 22:39
音についてはよくわからないのだけれども、オレンジ色に光り、熱を発しながら鳴るアンプは見ていて和むね。
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B705
at 2007-02-08 00:21
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音は、むしろ、トランジスタより鋭い印象がありますね・・、まあ、それも器械によるのでしょうが??・・どのみち、目の前にアーティストがいないわけですから、オレンジ色のか細い光が、心をセンチメンタルにしますね!
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antonin at 2007-02-08 01:12
センチメンタルになっちまうのかぁ。深いね。
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B705
at 2007-02-08 18:23
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もしもさ、真空管の光が蛍光黄緑とかだったら、ヒくよね・・。中で火花がバチバチとか・・。・・それはそれで楽しいだろうけど・・。
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antonin at 2007-02-09 05:36
そうなんだ。そこら辺の美学はわからんなぁ。
ちなみに陰極線管の真空度と加速電圧を高めた場合、陰極線が当たったガラス面は蛍光黄緑に近い色で発光します。なかなか美しいよ。
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B705
at 2007-02-09 17:57
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ああ、そうそう、なんだか見たことあるような気もする!・・それ系の色調であれば、ホタルみたいについたり消えたりしたらどうかなあ??
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antonin at 2007-02-09 23:29
でもね、あの光と一緒にX線も少し出ているから、あんまり近づかないほうがいいよ。ブラウン管の発光は蛍光材が塗ってあるからX線は出ないけど、ガラスが自発光するほど高エネルギーのは怖いよ。
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B705
at 2007-02-09 23:46
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あ、そうなんだ・・。・・それくらい意識というか、情緒に働きかけるエネルギーがあるといいのに・・疲れきったときには!
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