安敦誌


つまらない話など
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ボンクラテスの弁明

昔ギリシャのアテナイにソクラテスという男がいたが、あれは賢人ではなかった。ただ単にアマノジャクな性質の男であった。常識的で賢い妻を娶ったが、常識的とはアマノジャクな男がもっとも忌み嫌う性質であった。社会の礎である常識を、疑うというよりむしろ積極的に否定し、非常識な視点を説いてまわる男であった。社会の基礎を揺るがすことを声高に述べ続けるこの迷惑極まりない男を、人々は遠ざけるようになった。

常識的で堅実な大人たちに疎んじられたソクラテスは、そこそこの常識は学んだもののまだ経験の浅い少年たちを捕まえては、肉欲におぼれる男女の関係より、私と君の精神と精神の関係がよほど美しいじゃないかなどとたぶらかし、その少年の、一枚のカーペットのように軟弱な常識の端々をペロリとめくり上げては、常識とはこれほどもはかないものであり、私たちは何も知らないのだと説いた。この男はこうした少年を次々に捕まえては有害な会話を繰り返し、大人たちに向けた本など一冊も書かなかったのである。

多くの少年はソクラテスの常識外れの話を無視し、健全な大人に成長したが、数人の少年たちはそうしたソクラテスの話にすっかり毒されてしまった。彼らが成人すると、アテナイの社会の礎である常識を、石畳のように有益なものまで次々にめくり上げる狼藉を繰り返した。あのソクラテスはいまだ懲りずに若者と非常識談義を繰り返していたから、世の常識的な大人たちは、この非常識で、若者とアテナイの街にとって有害極まりない男を、毒殺の刑に処した。

しかし常識的で賢いアテナイの大人たちのことであるから、本気でソクラテスに死を命じたのではなかった。刑には執行猶予を与え、その間の逃亡を当然のように許していたのである。これはやや重い追放刑でしかなかったのだ。しかし、ソクラテスは非常識の男である。「悪法もまた法である」と憎まれ口を残し、本当に毒をあおって獄中で死んだのだ。

そして、迷惑な男はアテナイから永遠に去った。しかし、彼の語りに毒された若者の一人に、ひどく賢く、また弁の立つ男が含まれていたのは、アテナイにとってきわめて不幸であり、そして後世の人間にとっては、この非常識な男の記録を野次馬として楽しむという娯楽が残されたという意味で幸いであった。

この肩幅の広い男は、「プラトン」とあだ名された。日本人にたとえれば「ひろし」というところだろう。プラトンは、若い日に聞いたソクラテスの話を美化し、そこに自分の考えを込め、いくつかの不思議な会話文を残した。これが今日知ることのできる、非常識男ソクラテスの記録である。

ソクラテスは、あるいは天才だったのかもしれないが、あまり益のある男ではなかった。特に同時代人にとっては迷惑以外の何ものでもなかっただろう。こうした非常識な男の話に耳を貸すのは、おそらく思い上がりの激しい青年と相場が決まっている。そして、非常識を得た青年は、時にソクラテスを上回る害ともなり、あるいは多少の益ともなる。どちらにせよ、プラトンのような逸材が受け手に回るのでもなければ、確実に害となる。

ソクラテス以下のボンクラテスは、常識を巧みに操る大人たちに虐げられたからといって、非常識話に耳を貸す若者を探しに、決して学園をさまよったりしてはいけないのだと歴史は示している。
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by antonin | 2007-02-11 22:35 | Trackback | Comments(0)
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