安敦誌


つまらない話など
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工学的に見るドラえもん環境

古いネタなので、どこかに同じような意見は数多くあると思うけれども、googleで軽く探したところでは行き当たらなかったので書き記してみる。自分でも最近思いついたことではなく、学生時代か、あるいは社会に出て早々に気づいたことを思い出したに過ぎない。


ドラえもんというのはそれ自身が夢の機械であり、その「腹部」に張り付いている四次元ポケットからは、また多数の夢の機械が飛び出してきた。その夢の機械であるドラえもんがどこから来たかといえば、のび太の使われない勉強机の引き出しをリンク元とした、2世紀ほど先の未来からであった。未来が夢に満ちていた、高度成長期末の物語だった。

大人になってドラえもんの活躍を醒めた眼で見てみると、ドラえもんやその道具たちのエネルギー源は何なのか、という問題にぶつかる。鉄腕アトムでは明確に小型原子炉が「胸部」に収められているということになっており、そこから十万馬力という出力が得られる。比喩的には乾電池を入れたおもちゃのように自走することができる。

最近の流儀に倣って十万馬力をSI単位系に換算すると、74.57MW(メガワット)ということになる。常にこの出力を発し続けているとPentium 4同様の放熱問題に見舞われるので、最大出力が十万馬力ということだろう。ちなみに最近横浜港に寄港して話題となったクイーン・エリザベス2号のメインエンジンの最大出力が、約12万8千馬力である。アトムはだいたいあれくらいの最大出力であるということになる。

話が逸れたが、ドラえもんも同じようにエネルギー源を内蔵しているということになっている。しかしそのエネルギー源はアトムのような核分裂型の原子炉ではなく、人間のように普通の食物からエネルギーを取り出す原子転換炉というような説明がなされていた。この転換効率が最も良い物質が「どら焼き」であり、従ってどら焼きがドラえもんの大好物であるという説明もあった。

このあたりに厳密性を求めても仕方がないので深入りしないが、とにかく、アトムが電池を仕込んだおもちゃのようなエネルギー供給をしているのに対して、ドラえもんは動物、あるいはガソリンを注ぎ込めば再び走り続けられる自動車のようなエネルギー供給をしていることになる。つまり、エネルギー源は物質として外部から取り込んで連続運転できるようになっている。電池の交換などは原則的に必要としない。

ちなみに原子力潜水艦や原子力空母はまさに鉄腕アトム式と言えそうだが、アトムが電池のように原子炉ごと交換していたのに対し、これらの艦船では、ドックに入ってメンテナンスする際に、劣化した燃料棒を新品の燃料棒と交換するので、エネルギー源となる物質だけを供給するという意味において、エネルギー供給の形態としてはむしろドラえもんに近い。ただし、ドラえもんは毎日食事をしているように見えるが、原子力艦船は数年に一度の燃料交換で済むものとみられ、エネルギー源の供給頻度としてはやはりアトムに近いといえるのだろう。


このように、ドラえもんはどら焼きなどの人間向け食物からエネルギーを得ることができる。ただし、その秘密道具のエネルギー供給はどうなっているのだろうか。ドラえもんの秘密道具は、野比家に蔵を建ててそこに仕舞いこんでいるのではなく、四次元ポケットに収納して、ドラえもん自身が常に取り出せるようになっている。持ち運んでいるのは、四次元空間に収納された道具に対する動的なリンクであり、かつ物理的な取り出しポートである四次元ポケットだけであって、道具そのものを持ち歩いているわけではないから、重量はポケット分だけで済む、ということらしい。

そしてドラえもんのお話では、各話ごとにのび太が持ち込んでくる要求に応じて、ドラえもんがひとつずつ秘密道具を四次元ポケットから取り出す。そして、一話分の問題が解決すると、おそらく道具は再びポケットを通じて四次元空間に収納されるのだろう。すると、秘密道具は一つの問題を解決する時間だけ稼動できる分のエネルギーを蓄えていればいいことになる。あるいは、太陽光やドラえもん自身が発するエネルギーなどの、環境エネルギーで動作していると考えても良い。

アトムやドラえもんのような連続稼動ではなく、秘密道具は一話かぎりの間欠稼動となるので、四次元空間に収納されているときに、携帯電話や携帯音楽プレーヤー、あるいはデジタルカメラをクレードルに収容した場合と同じように、不使用時にエネルギー補充が行われていると考えることができる。


以上がドラえもんのエネルギー問題についてである。なぜこんなことを考えてしまったのかというと、ドラえもんが遠い未来から昭和の時代にやってきて、遠い未来ならではの先進道具の数々を駆使し、のび太の周囲の人間の鼻を明かしてしまうのだが、果たして昭和末、あるいは平成初頭の人間が、その時代の最先端ツールを持って江戸後期の江戸下町あたりへ乗り込んでみた場合、果たしてドラえもんと同じことができるか、ということを考えてしまったからだ。

たとえば、パソコンやら携帯電話やらを江戸期に持ち込んだとして、バッテリーが切れたらそれまでである。江戸のどこを探しても、100Vでも220Vでもいいが、電力を供給してくれるコンセントはないのである。発電機のためのガソリンが欲しいといっても、手に入らないと覚悟しなくてはならない。ドラえもんは、その手の問題は解決した上で昭和の東京へやってきていることがわかる。平成の人間が江戸へ行くならば、ある程度の出力がある太陽電池などを設置させてくれる先祖なり宿主なりを探す必要がある。

電気、水道、ガスなどは、阪神大震災でそれらが寸断された頃から、「ライフライン」、つまり「生命線」あるいは「命綱」の直訳語として一般に知られるようになったが、それに情報通信ネットワークが必須の線として加わるようになる頃から、「インフラストラクチャー」あるいは略して「インフラ」という語が一般に使われだすようになった。"infra-"が「下の」という意味で、"structure"が「構造」という意味だから、「下位構造」とか、単に「基礎」とか言ってしまえばいいだろう。意味的には「社会基盤」という風に訳されることも多いが、"infrastructure"の使われ方はもう少し広いような気がする。

ところで、昭和の時代から、携行が可能なトランシーバーがあったが、それらはトランシーバーが2台あれば互いの送受信回路を通じて通話ができるタイプのものであった。「何らかの手段で」周波数を合わせ、電波が届けば通話が可能となる。インフラストラクチャーのようなものは法的なものを除けば、技術的には必要がないといえる。

そうしたものは現在でも一部で使用されているが、現在最も一般的に使われている無線通信機は、言うまでもなく携帯電話である。無線通信機の中でも、携帯電話はそれ自体が独立した通信機ではなく、基地局および基地局間の通信網を前提とした通信端末となっている。固定電話やインターネットも含む、大きな情報通信網の「端っこの末っこ」が携帯電話なのである。

つまり、そうしたインフラが停止するとか、あるいはごっそり無くなってしまうと、どんなに高性能の携帯電話端末であっても、その機能の多くを失ってしまう。江戸時代に携帯電話機2台を持っていけば、バッテリーが残っている間であっても、どちらも電波圏外となって電話もメールもネットも使えなくなってしまう。残る機能といえば、いいところカメラか時計くらいなものだろう。

ドラえもんが造られる時代には、道具の一つにタイムマシンが含まれることからも分かるとおり、高度なインフラが存在しない時代環境でも動作することを前提に道具が作られているものと思われる。具体的には、古典的なトランシーバーのように自己完結的であったり、あるいは周辺装置によって簡易インフラを自ら作ったりすることで、常設のインフラに依存せずに動作できるように設計されていなくてはならない。場合によっては、対象となる時代の電波使用状況などをデータベースに持ち、互いに干渉しないように使えるようにする必要もあるだろう。


こうしたインフラのない環境で最先端の道具を使う技術というのは、ライフラインの例で挙げたように、地震や洪水などの災害によるインフラ破壊の発生時などが考えられるが、現代においてこの類の技術が一番進歩しているのが、実は軍備である。だから大規模災害救助には軍隊が最適なのである。

戦場では、あらゆる常設インフラが攻撃により破壊される可能性がある。湾岸戦争やイラク戦争のように、そもそも自国のインフラがない地域まで攻め上り、その上でなお、民生機器の最先端を上回る高度な技術を適用した軍事機器を使いこなす必要がある。衣食住と弾薬の確保という古典的な兵站(へいたん=logistics)はもとより、石油、電気、その他のエネルギー、そして近年では情報ネットワークを戦場に即時展開する技術を、軍は擁している。

もっとも、軍が常設のインフラを全く利用しないかというとそうでもなく、敵の設備を接収して利用したり、もっと今日的な例では、GPSをはじめとした人工衛星による情報ネットワークを、一部の宇宙技術を持った大国以外に対しては不可侵で安全なインフラと仮定して利用している部分がある。中華人民共和国政府が宇宙開発にこだわるのも、このあたりに一因があるのだろう。

ドラえもんの世界でも、秘密道具を格納する四次元空間や、タイムマシンがつなぐ未来との時空路などは、20世紀の技術では不可侵な技術インフラとして利用されていると見ることもできる。つまり、ドラえもんの秘密道具は四次元ポケットからしまわれるたびに未来へ戻り、エネルギー補充されたり、場合によっては修理・交換されたりしているということも、可能性のひとつとして考えられる。

ところで、「敵の設備を接収して利用する」タイプの典型に当たるのが、同じく未来からやってきたロボットでも、アーノルド・シュワルツネッガー・カリフォルニア州知事演じる「ターミネーター」だろう。彼は特に未来の道具をひけらかすでもなく、不死身の体だけを頼りに、淡々と20世紀の道具を使いこなして、少年を追い詰める。ドラえもんとは、いろいろな意味で対照的である。

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今回の主題としてはこのあたりで終わりなのだけれども、長くなったついでにまた少し違った話題を。ドラえもんは日本の高度成長期が終わった頃に始まった物語である。そこに至るまでの30年ほどの間には、かなり大幅なインフレーションが起こり、過去と当時では相当に物価が違っていた。このインフレーションは、終戦直後のものを除けば、通貨の乱発などによる不健全なものではなく、所得倍増計画などの政策、公共インフラ整備事業や実質的な産業発展などによる、健全なインフレーションであった。

そうした時代背景を写した道具もドラえもんは持っていて、名前は忘れたが、昔の商品を昔の値段で買える、というような道具があった記憶がある。たとえば昔の鉛筆が1円で買えるとか、そういったもので、当時の子供たちの少ない小遣いの価値を何倍にも増やし、物欲を満たすという魅惑の道具であった。デフレーションと「IT革命」後の現在であれば、低機能の電気製品を法外な価格で売りつけられる道具、とでもなるのだろうか。

この問題も現実世界に引き寄せることがいくらか可能であって、たとえば国際貿易の場合がある。先進国同士がフェアな国際競争を繰り広げるのも国際貿易だが、高度な産業や経済商品が発達した国家と、素朴な農産品程度しか産出しない国家が、通貨を通じて互いの商品を取引するのもまた、国際貿易の一形態である。

これをやってしまうと、たいていは先進国の商品に高値が付き、素朴な国の産品は安く買い叩かれる。すると、経済不均衡によって素朴な国家の経済はさらに貧しくなる。それぞれの国が生産する商品そのものの商業的価値による格差もその理由のひとつではあるが、それだけではなく、経済学や将来予測情報などの、情報格差による交渉力の欠如などによって買い叩かれるほうが、実態としては大きい。

だから、ドラえもんの道具で時代を超えて通貨ベースの商取引をする場合、子供の小遣い程度ならまだしも、大規模にやってしまった場合には、過去の世界で経済崩壊が起きてしまう可能性が高い。いわゆる「南北問題」に通じる問題である。

日本も天下泰平となった江戸前期、ファッションに凝り始めた日本人は、当時の先進国であった中国大陸から絹を大量輸入し、対価として金銀銅などの金属資源を輸出し尽くしてしまい、経済危機に陥った。そこで、養蚕法を導入して絹布の国産化を行ったり、朝鮮出兵で拉致してきた朝鮮の陶工から学んだ製磁技術を磨いて高度な磁器を自給したり、出島貿易など一部を除いた禁輸政策を敷いたりと、江戸幕府懸命の施策の甲斐あって、経済的難局を乗り切ったという歴史がある。

華美な衣服を禁止するお触れを出した将軍があったが、それは倫理的に贅沢が卑しいというだけの理由ではなく、国家経済的な視点があってのことだった。また、美しい磁器を産出するのは当時の東アジアだけであったのだが、それを大量に輸入していたヨーロッパでウェッジウッドやマイセンなどの名高い磁器が開発されたのも、やはり似たような理由からだったという。


エネルギー、情報、エントロピー、通貨経済。ドラえもんには、突っ込めば興味深いテーマがたくさん潜んでいる。
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by antonin | 2007-04-19 23:59 | Trackback | Comments(2)
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Commented by oki_mo at 2007-04-20 20:25
もし、江戸時代に、紙おむつとか、女性用ナプキンなんて持っていったら、魔法だと思われるのかなぁ・・・(素朴な疑問)
Commented by antonin at 2007-04-24 12:00
若い人は受け入れてくれるかもねぇ。
おばちゃんはきっと「布が一番よ」って言うと思う。
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