安敦誌


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以前の記事

情報とカネ

いくつか、伏線のある話。

ひとつは、知識バカの記事
安敦誌 : 散財とかそこらへん
に出てくる、
コラム: カネの時代の終わり
という外部ページのコラム。

21世紀はカネより知識の価値が高まるという大胆な意見。確かに、日本のバブル期と世界の現在における投資資金過剰流動を見ると、確かにそういう時代は来るのかもしれないと思わされる。

もうひとつ。
安敦誌 : 子供の科学、大人の科学
に出てくる、情報量エントロピーと熱力学的エントロピーの話。以前からこの二つのエントロピーの間には、単に数式上の構造が同じということ以上の関係があるのではないか、つまり、1bitの情報を記憶したり、2bitの情報から1bitの情報を出力する計算をしたりするとき、物理的に必要なエネルギー量には理論限界があるのではないかと考えていた。

頭が悪いので考えていただけで終わっていたのだが、今日なにげなく「マックスウェルのデーモン」で検索を掛けてみると、Wikipediaに非常に興味深い項目が見つかった。最近のWikipedia日本の、(一部分野での)内容充実には目をみはるものがある。

参考:「マクスウェルの悪魔 - Wikipedia

このページによると、情報とエネルギーは等価であり、引用すると
例えば、 2.65 × 1020 ビット、 0 ℃ のメモリは、その利用者がメモリすべての状態を知っている限りおよそ 1 J のエネルギーを生み出す「燃料」と見ることができる。

なんだそうである。やはりそうだったか。アインシュタインは質量とエネルギーの等価性を見出して、原子力エネルギーの利用に道を開いたが、情報もまたエネルギーと等価であったことがわかり、ある情報を保持したり演算処理したりするのに必要不可欠なエネルギーの最小値を知ることにも道が開けたことになる。あるいはもう理論的結論が出ているのかもしれない。

すると、量子ビットを量子演算器に掛け、不確定性によるエラーレートを下げるためにある程度のマージンをとることにすると、論理ゲートひとつが1回の演算をするのに必要なエネルギーの理論的最小値が求まり、それを目標として向かって電子回路の低電力化技術が大きなブレークスルーを迎えて、また進歩するかもしれない。これはなかなか面白いことだ。

MOSゲートにこだわった微細化による回路技術のロードマップは行き詰まりを見せている。ここ数年で進歩が止まることはないが、20年先は見えない。今は電子の奔流である電流でビットを操作しているが、たとえばフェルミ粒子のスピン状態であるとか、もう少しマクロなもので分子の電子軌道の状態であるとか、そうした物質のプリミティブな状態でビットを表せば、プロセッサの概念がまったく別のものになってしまうだろう。

素子の寸法が小さくなることはもちろん、そのレベルに近いエネルギーのやり取りで演算も可能になれば、消費電力も桁違いに低減することができるだろう。もちろん最終的には人間に認知できるレベルまでスケールアップする必要があり、そのためのエネルギーはもちろん必要なのだけれども、それにしても電気的なエネルギーではなく化学的なエネルギーを利用したりして、熱的なロスの少ない、言い換えるとエントロピーの増大の少ない増幅も可能になるかもしれない。

現在研究されている量子を使った情報処理の2大分野は、量子状態の重ねあわせでテスト対象を全て表現し、それに対して適切な「拘束」を行うことにより量子状態が収束し、それを観測することにより答えが求まるという量子コンピューティングの分野と、単一の光子の偏光状態でビットを表し、その情報が何者かによって観測されると量子状態が変化して盗聴がわかるので、通信のセキュリティが確保できるという量子暗号の分野だ。

これらの分野はそれなりに進歩して、いずれは実用化される可能性もあるだろうが、現在の情報処理や情報通信の概念をあまりにも大きく覆してしまうので、あまり広く使うことはできないだろう。やはり、これまでの設計資源が流用できるような形に作り込めなくては、技術者が集まって技術競争が加速度的に進むというような状況にはならないだろう。

無線通信の分野で、米軍払い下げのUWB(Ultra Wide Band)という技術がある。このUWB(超広帯域)という名前は、従来型の周波数領域から見た呼び名であって、内容的には時間領域で表現されるビットをそのまま飛ばしてやろうというものだった。すると結果的に超広帯域になり、各周波数のエネルギーは雑音レベルより小さくなる。そのため、別名はタイムドメイン(時間領域)通信とも言う。

ところが、これにも障害が立ちはだかり、微小であってもノイズのような電磁波が出ると従来型の機器に悪影響が出るのではないかという話になり、現在ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)通信や地上波ディジタルテレビなどの無線通信で使われているOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplex)のサブキャリアを低速低電力にして、その代わりにサブキャリアの数をめちゃめちゃ増やして超広帯域にするという、コンセプトは同じだが、原理はまったく違うものがUWBとして開発された。

そういうわけで、量子効果を使って低電力化と微細化が進むにしても、入り口ではそれほど劇的に変わらず、現在のMOSゲート構造の一部に量子効果を利用するとか、そういったあたりから変革が始まるのではないかと思っている。そうでなくても薄くなりすぎたゲート酸化膜を抜けるトンネル電流が問題になり始めているのが最近の先端半導体素子ではあるので、量子ゲートの部分的応用も起こりやすいのではないだろうか。

そういう過渡的な製品で技術を積み上げれば、いずれは自己組織化した原子レベルないしは分子レベルのゲートで論理演算ができる時代も来るだろう。あるいは現在の量子コンピューティングの理論を応用して、1素子でマルチビット演算くらいはできるかもしれない。


と、すっかり話がタイトルと別のところにすっ飛んでしまいましたが、言いたかったのは、情報とカネは実は等価なものなのではないかと思ったのです。

マックスウェルのデーモンが、分子運動に関する情報を持っていれば、エネルギーを消費することなくエントロピーを下げることができるのと同じく、経済活動に関する情報を持っていれば、働くことなくカネを手に入れることができるでしょう。

一番単純な例が株式のインサイダー取引ですが、これは法により禁止されています。また、アウトサイダーであっても他者が知りえない確実な経済情報を持っていれば、金融デリヴァティヴ商品などを使って、一夜にして大金を得ることができます。これもあまり大々的にやると司直の手が伸びるというのは、村上ファンドの一件で明らかでしょう。

こういうニュースがありました。

誰が新聞を滅ぼすのか (ネットのあした):NBonline(日経ビジネス オンライン)

新聞が滅びるのは一向に構わないわけですが、ウォールストリートジャーナル紙を買収したメディア王マードック氏が、「経済情報はカネになる」と言っているそうです。これは、上記のような、マックスウェルのデーモンのような直接的取引による収益を指しているのではないでしょう。もしそういうことをすれば、いずれ必ず法的に問題になります。ここで発言しているのが「メディア王」であることを考えれば、「経済情報は良い売り物になる」ということなのでしょう。

プロのディーラーから日曜投資家まで、あらゆる投資家がマックスウェルのデーモンのように情報の収集と活用によって有利な取引を行い、一攫千金あるいは、高い利回りを狙って日々取引を重ねています。金融市場には、つねにある程度の無知な投資家が混ざっているので、そうした投資家の損を回収することによって、プロの投資家は収益を得ることができます。

ただ、なぜ投資信託などというシステムが存在するのか。よくある話ですが、「そんなに儲かるなら人に言わないで一人で儲ければいいのに」という疑問があります。これに対する答えは、「リスクは客に負わせて、自分はマネーゲームに専念し、信託手数料という確実な収入を狙う」からに他なりません。これなら、金融知識を生かして安定した生活が望めます。

マードック氏も同じでしょう。彼は客の金で投資したりはしませんが、投資家が取引の最大の材料とする「経済情報」を売ります。これも、客の投資の成否とはまったく関係なく、つねに収益を上げることができます。

簡単に言うと、なぜ競馬新聞や予想屋が存在するかというのに似ています。そんなに予想が当たるなら、自分が馬券を買えばいいのですが、当たりやすい馬券は配当が小さく、配当が高い馬券は当たりにくく、胴元のいるギャンブルを長く続ければ、たいてい負けのほうが勝ちを超えますし、相当に優秀な予想屋でも生活できるほどのプラスにはならないでしょう。そこで、予想や馬体のデータなどを売り、安定した収益を狙うのです。

つまり、株の信用取引で儲けたり、ベンチャー起業して社長になって儲けたりすることもできますが、その裏には生活基盤を失うほどのリスクが伴います。その一方で、そうした意欲のある人たちに向かって情報を販売するという事業が、実は一番確実有利な商売なのです。詐欺にならない程度の売り方であれば、罪に問われるリスクもありません。優良な顧客を選べば、金払いがいい上に、損が出ても殺されたりはしないでしょう。

カネを払うと経済情報が買える。経済情報を得て取引するとカネが儲かる。そして誰が取引で儲けたかを分析すると経済情報になる。その情報がまた売り物になり、カネが儲かる。大金を使って仕手戦を仕掛ければ、市場に株価情報が広がり、株価が高騰する。そこで売り抜ければ、またカネになる。

市場の動きや投資家全体の気配というのは統計的なもので、その中で統計ではない個別情報を持つと、その情報の信頼性に比例した利益が上がります。これはマックスウェルのデーモンと同じ原理です。デーモンが熱力学的系の外側にいれば、系のエントロピーは減少しますが、デーモンも含めてひとつの系と考えれば、デーモンの持つ情報によって系のエントロピーは増大し、熱力学の第二法則は守られます。

市場原理にもやはり似たような法則があるのでしょう。市場の外側から、市場内部の情報を使って取引をすれば、市場からエネルギーではなくカネを得られます。一方、市場の内部でこれを実行すれば、結局どこかで損が出て、市場原理は守られます。

低金利が長く続き、あちらこちらから投資のお誘いがありますが、プロに勝てるとは言わないまでも、相手が何を言っているのか理解できる程度に渡り合える知識を持つまでは、高い利益を謳う金融商品には手を出さないのが賢明でしょう。大前研一さんが、経済学の常識が通用しない日本人の様子に、腹を立てているのではないかという論調で分析を行っていますが、

日本人の資産管理、大研究 (1) / SAFETY JAPAN [大前 研一氏] / 日経BP社

投資もまた、優雅なギャンブルに過ぎないということを考えれば、海外の貪欲な資本に利益を吸い取られるよりは、ほぼ無利子の預金で寝かせておくほうがまだ賢明かもしれません。税金を取り戻すために、国債くらいは自分で買ってみてもいいかもしれませんがね。どのみち借金だらけの我が家には関係のない話ではあります。

話がすっかりとっちらかってしまいましたが、情報を持って投資するより、情報を投資家に売るほうが確実に儲かるという結論で終わりということにしましょう。
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by antonin | 2007-08-04 02:10 | Trackback | Comments(5)
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Commented by NAF(なふ) at 2007-08-04 10:33 x
まずは率直な感想>長っ!

これからじっくり読みます。
でも私は読解力があまり無いため
時間かかりそうです。

あー、そういえば、

>自分が理解していることを他人に理解させたり、
>相手が理解できないということを自分が理解したりすることの
>極端な難しさに、最近強いストレスを感じている。

とあんとはおっしゃってたけど、理解しようとがんばっても
なかなか理解できない本人もストレスです。

すみませんね。
Commented by antonin at 2007-08-05 14:43
毎度どうも。

タグに「妄想」と付いているやつは、他人に理解させるというより、思い付きを書いているだけなので、理解できないと思います。

この文章に、参考文献による裏付けや理解を助ける図表を入れて、全体を読みやすくするために一貫した構成をまとめると、一冊の本が書けるかもしれません。書きませんけど。

まあ、ストレスになるくらいなら読まないという手もあります。ただの個人blogですし。不親切ですけど、そんなスタンスで運営しております。
Commented at 2007-08-06 12:39 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by antonin at 2007-08-06 22:54
どうもどうも。
鍵マークつきコメントをいただくと、返事に困るのですよね。
どうしたものでしょう。
Commented by antonin at 2007-08-06 22:57
それと、「今度はトラックがジェットエンジンだ」のようなお気楽な記事もございますので、そちらをお楽しみください。
「妄想」は自己満足の世界ですので。
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