安敦誌


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死して屍拾う者無し

<減量作戦>ジョギング中に男性課長が死亡 三重・伊勢 | エキサイトニュース

久しぶりに時事ニュースを。

メタボリック・シンドローム(直訳すると「代謝性症候群」)というのは最近話題のキーワードだけれども、これもやっぱりどうなんでしょう。

肥満は成人病のリスクを高めるという定説があって、こういう説はある高名な医者が突然言い出して流布するケースと、統計調査による疫学的検討の結果として推論されるケースの二つがある。たいていこうした疫学的調査というのは欧米で積極的に行われるが、「こういう関係が見られた」と客観的事実だけを示すことが多い。「これが原因で病気が増える(減る)」ということは、疫学の研究者はなかなか言わない。

ところが日本では、マスメディア、特にテレビが調子に乗って「断定口調で」「演出効果を交えて」「エンターテイメント性を高めて」こうしたデータを番組に利用する傾向があるから、専門的な教育を受けていない一般市民は、あたかも毒か薬かというように疫学的レポートを信じ込んでしまう傾向がある。

しかも、疫学のレポートは所詮統計処理の結果であって、ある信頼度の範囲内で「たまたま」そうした結果が出る可能性を排除することができない。ひどい場合には「ゲーム脳」のように恣意的なデータを取得している場合すらある。疫学が提示した仮説は、少し調査の条件を変えた追試であるとか、統計的ではなく生理学的な裏づけなどを取るまでは、確固とした学説とはならないのが普通だ。

けれども、「フランス人のパラドックス」の答えと言われた、赤ワイン中のポリフェノールが心臓疾患を予防するという説は、その後医学的定説として定着したという話は聞かないが、健康食品の売り文句としてはすっかり定着してしまった。そもそもポリフェノールという用語自体がフェノール性水酸基を持つ有機化合物群を指すものであり、何か特定の物質を指すものではなく、あまりにも該当物質の種類が多すぎる。だからカカオもブルーベリーもお茶もみんなポリフェノールで一緒くたにされてしまう。

例えば薬効成分であるサリチル酸メチルは消炎剤として有効だし、アセチルサリチル酸は解熱鎮痛剤として有効だが、サリチル酸を含んだエステル全般に薬事効果があるかといえば、そうとも限らないし、中には毒性を持つものだってあるだろう。大量投与すれば薬効成分でも毒になる。

奇形児をたくさん出してしまったサリドマイドという薬も、原料の光学異性体を十分に分離精製する技術があれば良い鎮痛剤だったという。組成も構造もほぼ同じで、光学活性が逆というだけでこれだけ違うのが生体作用の恐ろしいところだろう。チョコレートやブルーベリーに毒があるとは思えないが、何にせよ大量摂取は体に良くない。


メタボリック・シンドロームも似たような状況であって、アメリカ人のあの極端な肥満体形が成人病の元になっているという、疫学的にも生理学的にも裏づけの十分に取れた説がまずあった。それを日本に導入するのだが、ローレル指数であるとかBMI指数であるとか体脂肪率であるとか、そうした基準では成人病リスクが非常に高いといえるほどの肥満は日本人には少ない。

それでも肥満や成人病は増加傾向にあり、疫学的な調査を行ってみたら、一般に皮下脂肪と言われる体脂肪での肥満は成人病のリスクが比較的少なく、同じ体重でもMRIなどで筋肉の内側に着いた内臓脂肪の多い肥満に成人病リスクがむしろ高い傾向があるかもしれませんよ、という結果が出た。

体脂肪は成長期の食生活や遺伝的要因の影響が強く、なかなか落とせないのに対し、内臓脂肪はどちらかというとすぐに着いてすぐに落ちるらしい。かといって、1週間やそこらでは減らせないのであって、半年とか、1年とかの持続的な取り組みが必要になる。そして、減量の方法は体脂肪と同じで、カロリー制限とカロリー消費、つまり食事制限と適度な運動ということになる。

しかしながら、そもそもなぜ内蔵脂肪型の肥満が成人病につながるかといえば、血中の中性脂肪やコレステロールが増えて血管が詰まったり、血圧が上がり心臓に負担が掛かったりする、定常的な生理ストレスの影響だろうと考えられている。

そもそも内臓肥満の人はそういう生理的ストレスを抱えている状態なのに、この暑い時期にいきなり慣れないジョギングなどで心臓や血管に負担を与えたら、このニュースのような結果になるリスクは一気に高まる。プールウォーキングをするとか、階段を毎日歩いて上ってみるとか、その程度から始めないとかえって危険だろう。

本当かどうかは知らないが、ジョギング健康法の提唱者が、やはりジョギング中に死亡したという話を聞いたことがある。ジョギングでは、確かに減量できる。しかしそれは、ジョギング前とジョギング後で体重が変わっているというような話であって、その理由は汗で水分を失ったからだ。汗で体液中の水分とミネラルが急激に失われると、血圧のコントロールが難しくなる。これは水やスポーツドリンクを飲めばすぐに回復する。そして体重も元に戻る。

脂肪を減らすための運動法はもうすでにいろいろなデータが出揃っていて、よく聞く「有酸素運動」というのをすればいい。息が上がらず、軽く心拍数が上がる程度の運動を30分以上続けるようにすればいい。通勤通学で自転車や徒歩で少しペースを上げてみたり、家事で低いところにあるものを高いところに上げるような動きを繰り返せば十分で、あとはやはり食事の脂肪分、特に動物脂肪を減らすのが一番効果が高い。

有酸素運動の逆が無酸素運動で、肺からの酸素供給が筋肉での酸素消費に追いつかず、筋肉中の栄養物質を無酸素分解して乳酸が残るような反応が起こる。乳酸は筋肉痛の原因になるし、急な運動は筋肉や腱の怪我につながるし、体重に対して筋力が足りない状態でいきなりジョギングなどをすると、心臓だけでなく「ドスドス」と走ることで足腰の関節の軟骨などを痛めてしまう可能性もある。

とにかく、長い年月の生活「習慣」で体質に問題が出てしまった場合は、短期間の減量などではなく真の原因である生活習慣の改善をしないと、かえって体調が急変してしまう場合もあるだろう。

それから、今年のような猛暑に屋外で運動をするには水分とミネラル分をこまめに補給しないと、本当に命に関わる。アメリカのフーヴァー・ダムかどこかの建設作業員が、熱中症でずいぶん死んでしまい、それを研究した医師が、水分と塩分を摂取すると熱中症による死亡者がゼロになったか激減したか、とにかく明確な効果があったらしい。今回の事故でもそうした対策がとられていなかったのだろう。

気の毒な話だが、メタボリック「シンドローム」という病気を治療しようと思えば、それなりの知識が必要で、ただ体重が減ればいいという問題ではない。死者を出したこのプロジェクトの提唱者は十分反省して、これで減量に懲りるのではなく、安全な減量について一般広報活動を続けていくよう期待したい。

蛇足になるが、これもまだ確証が取れていない疫学調査として、日本人男性では従来の標準体重より、少し太めのほうが平均余命が長いという結果が出たらしい。そんな感じだから、糖尿や通風や脳梗塞や不整脈を起こす前に、食事を野菜と魚中心へゆっくりとシフトさせ、まずは一日10分くらいずつ軽快な足取りで歩いてみるという程度でいいんじゃなかろうか。そのうちもう少し歩きたくなるくらい足取りが軽くなるだろう。

「メタボ」などという流行語で商売をしたい人もいるんだろうが、蓋を開ければただの「生活習慣病」の潜在的患者というだけであって、特に新しいことは何も無い。テレビも新聞も、新しいネタ探しで実に忙しいことであるなと、また同じことをくり返し思ってしまったニュースだった。
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by antonin | 2007-08-18 01:42 | Trackback | Comments(0)
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