安敦誌


つまらない話など
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豊かさとは何か

結論から言うと、単純に生活に困らないことだと思う。

文明化が進んだ地域、特に都市部では金銭を使えば食料でも衣料でもサービスでも何でも受けることができるし、逆に言うと金銭がなければ家に住み最低限の食料を得ることもできない可能性もある。豊かさとは金銭を多く持っていることと等しい。

けれども、仮に金銭を一切持たず、収入が一切なくても、生活に困らないような環境があれば、そこでの暮らしは豊かな暮らしと言えるだろう。

ある人は美しい服がなければ生活に困るし、ある人はうまい酒がないと生活に困るし、ある人はパワフルな自動車がなければ生活に困る。しかし、広い土地に自然があり、あとは知恵があれば生活には決して困らないという人もいる。豊かさには人それぞれ、いろいろな方向がありうる。

それが、金銭という「数値」を使って高度に抽象化された豊かさの指標が現れると、この数値を多く集めることに一番の喜びを覚える人が現れる。現れるというより、こうした傾向は多くの人間に備わっていることではないかと思う。

勉強の成果を点数で評価されると、好きでもない勉強を一生懸命頑張った人もいるだろうし、ゲームの中に経験値で評価される部分があると、ストーリーの進行に関係なく経験値アップに頑張ってしまった人もいるだろう。博打も含めて、数字を増やすというのは多くの人にとって依存性の高い娯楽となりうる。

同様に仕事の成果を給与の金額で評価したりすると、その数字を高めることに喜びを覚え、尋常でない意欲を持って金を稼ぐことに執念を燃やす人が現れる。ある人は給与を上げることに意欲を燃やし、またある人は起業して給与生活以上の収入を目指し、ある人は株取引などの博打に近い取引によって金銭を得ようとする。そして極端には詐欺や強盗などの犯罪行為によって多額の金銭を求める人も現れる。

金銭には商品やサービスの取引の対価として、言い換えると他人の労働に対して支払われる対価という合理的で本来的な役割があるが、それとは違った視点で数値遊びをするいわゆる「マネーゲーム」も市場では可能になっている。

極端に言えば、自分では金を持っていなくともマネーゲームはできる。金を増やすアイデアさえ持っていれば、金を持っている人から金を借りて、利子を付けて返済する代わりに、仮に返せない場合もそのリスクは貸し手に取らせるというリスクヘッジを使い、首尾よく行けば金を増やすことができる。

実際に金銭を増やす方法は、実業の起業であってもいいし、金融商品取引であってもいいし、あるいは貸し手さえ許せば覚せい剤取引などの犯罪であってもいい。一般に貸し倒れのリスクが高いほど金利が高くなるというルールがある。貸し手は多くの借り手に対し貸し出すだけの資金力があれば、全体でプラスの利益を得るような利率を設定すれば、一定の割合までは貸し倒れを受け入れることが可能になる。これはある意味、生命保険をはじめとする保険制度にも似た、統計を利用した合理的な仕組みになっている。

このルールで言えば、金利が高いことはそれ自体は悪ではない。悪いのは、金利に見合った貸し倒れリスクを受容せず、返済不能になった借り手を再起不能なまでに追い詰める点にある。あるいは利子により返済不能になることが明らかな相手にまで貸し出すことにある。借りる必要のない相手に借金を勧めるのも余計なお世話だ。

ノーベル賞に、一般には経済学賞として知られるカテゴリーがあるが、その受賞者の中には先進的な金融商品を考案したり開発した学者が含まれる。そうしたもののひとつに先物取引があるが、これは本来、農作物のようにある年の気候変動などによって生産量が大きく変化し、それによって価格が大きく変化することで、売り手も買い手も大きな損害をこうむるという問題を、商品が収穫される前に取引することで、価格変動を安定化させて保護するという実利的な役割から生まれた。

しかし、この先物取引を使って、たとえば天候変動などの予測情報を買い込み、不作に陥ることがあらかじめ予想される農作物を先物取引によって比較的安いうちに大量購入し、実際に値上がりしてから取引権を転売するということが行われるようになった。そして、その行為をファンドという商品にして再販売し、投資家から資金を集め、リスクを投資家に負わせた上でマネーゲームを楽しむ人間が現れた。これが過剰な資金によって集中的に行われることにより、先物市場は本来の目的とは逆に乱高下することになる。

そういう方法によって得られた金銭であっても、それは法的に犯罪と規定されていなければ合法ということになり、その金銭によって物を買うこともできるし、サービスを受けることもできるようになる。実際には更に高度な金融商品が無数にあり、その中には巧妙に偽装されながらも公正でない取引が紛れ込んでいる。しかしその高度性から、法整備はつねに後手に回っている。

アメリカや日本などでは立法府の人間を代議士というが、代議士の活動に一番必要なものが金銭であるにもかかわらず、代議士が金銭を得る方法というのは非常に制限されている。金銭が必要というのは有権者を買収するという意味ではなく、政策研究にも政策を有権者に広報するにも自由になる金銭が必要という意味である。

代議士が金銭を得る方法が厳しく規制されるのは、彼らが権力に直結しているからであり、その権力を一部勢力に有利となるように利用するのを防ぐという合理的な理由があるのだが、結果的に金銭の出入りをいかに巧妙に隠すかというテクニックばかりが発達するという結果となった。そうした巧妙さに最も長けているのがファンドを販売するプロのトレーダーであり、彼らが法律的に不利にならないように金銭の一部を「投資」することも十分可能である。

トレーダーでなくとも、多額の金銭を持ったものなら自らを有利にするためにその金銭を使う方法を考えるだろう。代議士への献金を禁止するより、自由化する代わりにその全てを公表することを義務化し、それぞれの議員の立ち位置を情報として公開するほうがずっと公正であるように思う。それぞれが背景に抱える利権団体の意見を正々堂々と議論の場で戦わせるべきだろうと思う。

それはともかく、社会が高度化、複雑化している本来の理由は、人が生活に困らなくなるためであって、最初に定義した意味で人が豊かになるためだろうと思う。ただし、豊かさの基準としてあまりに便利で強力な金銭という基準が存在するために、本来の目的が見えにくくなっているようにも思う。

たとえば国に莫大な債務があっても、生活保護水準以下の収入しか得られない世帯が多数あっても、それでも誰も生活に困っていないのならば、それはそれで豊かな世界であるということを忘れがちなのだろうと思う。しかし実際にはそこまで劇的な思考の切り替えは難しいのであり、やはり金銭の力を適切に使って豊かな社会を取り戻す必要があるだろう。

年間3万人が自殺する社会というのは決して豊かではない。年間30万件の人工妊娠中絶が行われる社会というのは決して豊かではない。物質を消費することは豊かさの要因のひとつではあるけれども、消費すれば消費するほど豊かであるというわけでもない。

「美しい国」というスローガン自体は決して悪いものではない。国民が生活に困らず、自然を上手に利用し、伝統と先進のバランスが取れた文化芸術などが発達する国は、美しい国といえるだろう。しかし大前提はつねに生活に困らない豊かさにあると思う。そこに誇りも生まれ、国を愛する心も生まれるだろう。

それは決して法令などで強制されるものではない。ひとつの方向に集約することを強制すべきではない。結果だけを追い求めると、自然と無理が生じるだろう。桃李ものいわざれども、その下自ずと蹊(みち)を成す。「成蹊」という名前を持つ大学を出た首相には、その言葉の意味を改めて味わってほしい。

来年は今年より豊かな年になっているといいと思う。
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by antonin | 2007-08-25 21:42 | Trackback | Comments(0)
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