安敦誌


つまらない話など
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水を売るか、油を売るか

そろそろ気温も高くなってきて、熱源の多い職場では空調設定の話でいろいろと苦情が出始めている。少しでも電力負荷を挙げないで快適性を挙げるべくエアコンの設定をいじっているが、結構難しい。ビルの空調機というのは室外機が共通化されているから、西日の当たる窓際だけを集中して冷却しようとしてもうまくいかない。陽の当たる窓際の男性は汗をかき、陽の当たらない隅にいる女性は膝掛けをしている。

そんな中で、こういうものを見つけてきた人がいる。

ハイブリッド・ファン エココプター エアコンに取り付けて快適・省エネ・エコ空間に!

空気の吹き出し方向を変えられないタイプのオフィス・エアコンの吹き出し方向を定期的に変えてやるというアイデアはわかるのだけれども、羽根の面積が不十分であったり回転が軽すぎたりするために、吹き出し方向はほとんど変わらない。実際にこの「かざぐるま」を設置している施設があったので、ちょうど吹き出し冷気が当たる位置に手を置いてみると、やはり冷気は変化なく直撃していた。

この手の販売ページのデータはたいていアホだから、簡単に程度が知れる。「ハイブリッドファンの驚異の省エネ効果」という表データがあるが、2月に事務所の移転があり、その前後の電気代を比較している。面積が4倍になったのに電気代は下がりました、というようなことを言っているが、本気なのだろうか。多分本気なのだろう。

面積が4倍だろうと、陽が差してすぐに熱くなってしまう事務所と、ビル陰にあって効率の良い新型エアコンを設置した事務所では、面積に関わらず電気代が下がっても全く不思議ではない。しかも冷房だけではなく暖房時にも効果があると書きながら、12月と1月の電気代を比較するとハイブリッドファン導入後のほうが電気代が跳ね上がっているのだが、こういうデータを削りもせずに出している。そもそもこの金額は事務所全体の電気代であって、エアコン以外の要因も多数混ざりこんでいるのだろう。

こういうデータを「不都合な真実」とも感じないで出せてしまうことからも、製品の程度が知れてしまう。職場には既にファンがいるから困ったものなのであるが、昨日書いた意見などもあって、今は静かに笑っている。これで1基3万円もするらしいからおいしい商売だ。こういうおいしい商売の筆頭に、「水商売」がある。

参考:「水商売ウォッチング

「πウォーター」なんかはかなり下火になったが、こういう商売は定期的に発生するし、騙される人も定期的に騙される。うちの父もこういうのが大好きなので困ったものだ。値段がかわいいものばかりなので問題はないのだが、おっさんが唸り声を上げているだけのカセットテープを買わされて、なおかつ家で再生していたときにはかなり家出したくなった。「水と空気だけで発電します」という例のやつも、これでエネルギー危機は去ったと大喜びでした。

水というのは、特に日本においては原価が安く、それでいて命に関わるものなので、商売としては成り立ちやすいのだろう。バカみたいに高いものだけではなく、500mlで130円の水なども似たようなものだろう。私はあれだけはまだ金を払って飲んだことがない。無料提供のものを飲んだら美味かったが、やはり金を出してまで飲むものではないとも思った。最近の水道水は案外に美味いのだ。

金町浄水場高度浄水施設(第三期)事業評価|東京都水道局

かつて日本一不味いといわれていた金町浄水場の水はどれだけ不味いんだろうと思って引っ越してきたら、カルキ臭を抜くために浄水器を通して氷で冷やせば普通に飲めたので拍子抜けした。今では「カナマチのおいしい水」と呼んで愛飲している。いやまぁ、買った水より美味いとは言わないが、必要にして十分な品質なのだ。なにせこれで排泄物を流したり洗濯したりしなければいけない水なのだから。


一方で「油を売る」という仕事が、かつての日本にはあった。油自体が当時は菜種油だったりして「100%が植物生まれ」だとか、逆に「100%が動物生まれ」の鯨油だったりしたそうなのだけれども、原料も貴重で集める手間も掛かる高価なものだった。早寝早起きして行灯の火を節約すれば、三文の「得」になった時代だ。

油というのは粘っこく、技術的には「粘性が高い」と表現する。粘っこいので、壺から升に移して量り取り、それを再びお客さんの器へと移すのにやたらと時間が掛かる。この間、売り子はお客である奥さん連中と軽妙な世間話をするのだ。油を売るのには時間が掛かる。これを逆手に取って、話し相手というサービスも付加価値として売っていたのが江戸の世の油売りだったのだろう。

だから、外出して帰りが遅いと「どこで油を売っていたんだ」ということになる。油売りは回転率の低い商売だ。実に効率が悪い。しかしこういう効率の悪さというのは、一面で人を非常に安心させるものがある。

油というのは粘っこく、傾ければ落ちてはくるのだが、なかなか落ちてこない。しかもきれいさっぱりとは落ちきらずに、最後までいくらかは器にへばりついて残るものである。一方の水とは、ザーッと流れてスパッと切れる。最後に干しておけばきれいに乾く。これが水だ。実に効率が良い。皆が効率に憧れる世に、水商売は花開く。

今の日本は間接税が安く直接税が高い。所得税と住民税だけでいえば大したことはないが、健康保険であるとか年金であるとかが税金以上に天引きで引き去られる。これはカネの流れを管轄している役所が違うだけで、れっきとした税金である。一方の間接税は、たった5%の消費税があるばかりだ。かつては「贅沢品税」としての性質を持った物品税や高い関税があったが、今では消費税以外の間接税では自動車関連の多数の税金や、酒税にタバコ税といった嗜好品税などが残っているだけで、基本的にモノの流れに対しては課税率が低くなっている。

小泉改革の根幹にあった新自由主義とは、現状のシステムを改革するだけではなくて継続的な改革が起こりやすくする流動性を社会に持ち込むことも目的としていたから、終身雇用制と定期昇給で安定した未来というよりも、勝敗をはっきりさせて"Winner gets all"に近い仕組みを多数仕込み、時代に合わなくなった組織は退場させて時代に合った組織に交代させるという「理想」を持っていた。

しかしそう簡単にことが運ぶはずはなく、しかも小泉さんは郵政利権の破壊以外には間接的な興味しかなかったから、一部の新しい勢力に利益をもたらす過剰な流動性が持ち込まれたかと思えば、その一方で別の古い勢力に利益をもたらす膠着性にはほとんど手をつけずに残してしまった。その結果が今の格差社会である。

時代に合わなくなった古い勢力は、一部は駆逐されたものの、大部分は生き残っている。そして新規参入を呼び込むべき規制緩和は結局ほとんど実施されず、既存勢力が道を踏み外さないために過去の悲劇から作られた規制だけが、どんどんと外された。

従業員を社員として長期的に雇用するという、油っぽくねっとりとしたシステムは、実際には温められた油が徐々に流れやすくなるのとは違って、固まった脂が鉄板の近くだけ解け出して勢いよく流れるような過剰流動状態となり、ほとんど全てを失って過剰流動の波にさらわれる人と、その上に浮いて終身雇用と手厚い年金を維持する人に二分化してしまった。

中国が民主化することなく資本化し、14億の労働力が「西側」へと流れ込んだ。それも、働き手として直接海外へ流れるのではなく、工場を誘致するなどして中国国内で大量の安価な働き手を供給した。この結果として、品質に対して異常に安い商品が西側諸国を襲った。賢い国は関税や間接税で自国民を守ったが、日本は積極的に中国へ攻め込む姿勢を見せた。それは経済的に成功した面もあったが、やはり日本国内は混乱した。

人材をねっとりと雇用し続けるためのコストはどんどんと上昇し、一方で人やサービスを「商品」としてさらっと購入すれば安い消費税を払うだけで済むようになったから、川の流れのようにやってくる人材を商品として必要なときに必要なだけ買い集め、使い終わったらまた下流へ流すという、人材リサイクル社会が一部に現れた。しかし、その上層には「融け残り」がべったりと張り付いて浮いている。

必要な道路は絶対作ります。車が何台通るとかそういったことは問題じゃない。車が通るから道路が必要なんじゃない。「道路が」必要なんです。掻いても掻いても油は取れず、そこにべったりと張り付いている。国から地方の誰かさんへと、てろてろと油は流れ続け、これを断つことは容易ではない。政治家さんは、地元に帰っては珍しくもない豪華な料理を食べながら、行事宴席に参加しては談笑しつつ油を売り続ける。

前例主義の税金は油に似て、急にひねり出すことも絞り閉じることも難しい。何年も何十年も掛けて談笑しながら売る、べったりとした商品なのである。比喩的な由来を持つ「癒着」という言葉があるが、江戸の奥さんが当然に馴染みの油売りを選んで油を買っただろうと思われるのと同じように、税金と公共工事というべったりとした売り買いをする間柄にあって、癒着が起こらないわけがないのだ。

一方の都市部では、右から左へと勢いよく水を流して水を売る、高度でエクセレントで効率的なビジネスが盛んだ。売られているのは、商品としての物であったり、商品としての者であったりする。ゆく河の流れは絶えずして、しかも元の水にあらず。淀みに浮ぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しく留まりたるためしなし。世の中にある人と、職場とまたかくの如し。


世の中の趨勢など個人の力ではどうにもなるものではないが、まぁせめて馴染みの油売りを見つけては談笑して楽しみたいものだ。早くて安い買い物をする楽しみはもう十分満喫した。今度は、遅くてちょっと割高な売り買いをする楽しみを探してみるのもいいだろう。大事なのは割高なことであって、数百万円もする高価なモノである必要はない。50円で買えるものを、あえて250円で買ってみるだけでも、そこに新しい世界が見えてくるものなのかもしれない。

もちろん、付加価値である200円は物にではなく者に払う気がなくてはならないのだけれども。私はコレを買いに来たのではない、あなたを買いに来ているのだ。そういう客に私はなりたい。
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by antonin | 2008-07-12 01:03 | Trackback | Comments(6)
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Commented by アッサ at 2008-07-12 08:12 x
なるほど、政治家が油を売るって視点に立つと、必死になって油の暫定税率を維持したってのも理解できるな。 (笑)
Commented by antonin at 2008-07-13 00:13
>アッサ

コメントありがとう。

まさに油を売ってるな、あれは。(笑)

最初に言いたかったのは、「流動性は高すぎても(水)、低すぎても(油)ダメで程々がいいはずなのに、今の日本は両極端なんだよバカヤロー、という趣旨だったはず。

それがこういう文章になってしまうあたりが文才がないのだけれども、まぁ趣味なのでこれでいいのです。

ところでそろそろビールが美味い季節ですよ?>アッサ
Commented by アッサ at 2008-07-13 08:41 x
うんうん、まぁビールというのは季節を問わずうまいのだけれど、確かに最良の季節ですなぁ。
近いうちにぜひ行きましょう。
比較的いつでも大丈夫なので、適当に声かけてくださいな。
Commented by antonin at 2008-07-15 22:43
>アッサ

>まぁビールというのは季節を問わずうまいのだけれど
同意。年中飲んでます。(笑)

で、さっそく7/25(金)を仮押さえ。場所は適宜。
ちなみに都心回帰したので平日でもOKです。
Commented by アッサ at 2008-07-16 01:07 x
おうおう、では 07/25。
その日は午後新橋近辺で、その後 (たぶん18時には解放) なら大丈夫な感じであるよ。
Commented by antonin at 2008-07-16 01:21
ok,ok

楽しみだな。
新橋で、テレビのインタビューに出てくるようなオッサン的飲みをしてみるのも楽しそう。ガード下とかで。金曜は混むか。
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