安敦誌


つまらない話など
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そこに映っているのは私

最近またいろいろとアレなんですが、
なんとかやっています。

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「光の3原色」というのがある。赤(Red)と緑(Green)と青(Blue)の3色の光を、さまざまな割合で混ぜ合わせることで、すべての色の光を作り出せるという法則である。「色の3原色」というものもある。青(Cyan)と赤(Magenta)と黄色(Yellow)の3色の色素を混ぜ合わせて、すべての色の色素を作れるという法則である。(実際にはCMY系では完全な色再現性はないようだけれど。)

子供の頃にこの法則を知って、これはつまり光の性質なんだな、と思った。ところが、あとでわかったことだが、実はそうではなかった。それは、人の視覚の性質なのだった。光を分析してわかったことは、観測している人間自身の性質だった。



光の3原色を直接決めている要素が、網膜の上にある視細胞というものである。視細胞には桿体(かんたい)というものと錐体(すいたい)というものがあって、3原色を決めているのは錐体の方である。錐体は細胞内に含まれる感光蛋白の種類によってさらに3種類に分かれる。その3種類の色素が赤、緑、青の光をそれぞれ吸収して、生体電気信号を発生する。

これらの信号は全部脳に送られるわけではなく、視細胞に接続している網膜上の視神経によって、ある一定のルールに従って編集されて情報量を減らしてから脳の方へ送られる。ここでの情報処理も当然ながら物の見え方に深く影響していて、輝度(明暗)の信号は細かく認識できるけれども色の信号はそれほど細かく認識できないとか、それも色の種類によってその解像度が違うとか、そういう性質がある。

これらの特徴は、最近ではJPEG(Joint Photographic Experts Group)などの不可逆な画像圧縮で、どの情報を捨てるかというところに反映されている。もっと古いところでは、カラーテレビの信号のひとつであるNTSC(National Television Standards Committee)信号の信号帯域の配分などにも反映されている。もっとも、これが実験的に決められたのか、生理学的な知見を直接利用して決められたのかは知らない。

電子的に伝送する情報を突き詰めていくと、人間の認識を反映してしまうというのは視覚に限ったことではなくて、聴覚の方でも同じことが起こっている。CD-DA(Compact Disc Digital Audio)までは単純なPCM(Pulse Code Modulation)(今様に言えば「リニアPCM」)で時間領域で表した音声の波形を記録していたのだけれど、MD(MiniDisc)で使われた符号化方式であるATRAC(Adaptive TRansform Acoustic Coding)以降は音声波形をJPEG同様フーリエ変換(の一種)で周波数スペクトラムに変換し、不要な信号を捨ててから記録している。この「不要な信号」というものが、人間に認識できない(あるいは認識しにくい)種類の音声信号を表している。

人間の耳の奥には、鼓膜、小骨群、蝸牛管というものがある。最後の蝸牛管というのが蝸牛(かぎゅう、かたつむり)の殻に似た形をしていて、耳に入ってきた音波を周波数別に振り分ける。つまり、天然のスペクトラム・アナライザになっている。そこで振幅の大きい音波を受けると、その音波と周波数が近く振幅の小さい音波はマスクされて感じにくくなるのだけれど、そういうことがMD以降の音声符号化器(エンコーダー)の情報削減には利用されている。

普通の人間は、人間として平均的な感覚器と認知特性を持っているので、JPEGの画像やMP3(MPeg audio layer-3)の音声を自然に受け止めることができる。これが、平均的でない感覚の持ち主でない場合、もはや現実的なものに感じられない可能性がある。

視覚で色を見分けている3種類の感光蛋白は、光感応性がある分子(レチナール:ビタミンAの一種)のまわりを3種類の蛋白質が取り囲むことで、3種類の波長に反応する物質を作り分けている。蛋白質を合成する元になるのはDNA(Deoxyribose Nucleic Acid)上の遺伝子なので、そのどれかに変異があると、ある色を感じ取れなくなり、色盲になる。

一方で、余計な遺伝子を持っていれば、もっと変わった感光蛋白を持った細胞も作れる可能性がある。実際、鳥の視覚は4つの波長を認識することができるらしい。鳥類がテレビジョンを発明していれば、カラー映像は4色を混ぜて作らなければならなかっただろう。鳩が地面を歩くのを見ると、首を前後に振って歩いているが、あれを視線で追わないようにして見てみると、鳩は体の動きに反して頭を動かさないようにして歩いていて、限界に達すると今度は一気に頭を動かして、また固定するというのを繰り返している。あれも何かしら視覚の特性と関係があるのだろう。

無生物の話になるが、デジタルカメラなどで使われている固体撮像素子であるCCD(Charge-Coupled Device)などは、人間が感知できない赤外線領域もかなり広く感知する。人間向けの映像を撮影する装置では不要な赤外線をフィルタで遮断しているが、何もフィルタをつけなければ暗視カメラのようなものになりうる。CCDで外界を認知するロボットがあれば、人間とは違った原色系になる可能性もあるだろう。

見えるものと見えないものがある。見えるものの正体を突き詰めて自分自身を知るのも楽しいし、見えないものに想像をめぐらしてみるのもまた楽しい。視聴覚の話だけではないかもしれない。

参考:
キリヤ化学のサイトより「Q&A 52
色素メーカーのサイトから。本文の参考にさせていただきました。図解を交えて詳細な説明が見られます。52番以外のQ&Aも大変充実しています。担当者様の高い知性が伺えます。
アドビ・システムズのサイトより「RGB(CMY) Color Model
コンピュータまわりのRGBおよびCMY(K)問題について簡潔に説明。
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by antonin | 2004-11-10 01:49 | Trackback | Comments(5)
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Commented by andantino at 2004-11-11 10:14
めがね作るときに、赤と緑、どっちが良く見える?ってやるもんなぁ・・・。
印刷物を分版したものの黄版って、ボケボケでみえねーんだよな。
そりゃそうか。赤と緑だもんなRGBだと。
ふーむ なるほど。
Commented by ble_n_dy at 2004-11-11 20:55
赤って答えて、作っていたら、いっつも目が疲れる眼鏡でし。一度、緑って答えて作ったら、目が疲れない眼鏡ができたでし。・・・赤いのと、緑のどっちがはっきりしますか?って、黒い線のことだと思わなかったでし。どっちの面が、よく見える?って聞かれたと思っていたでし。どんくさいぶれでしw
Commented by antonin at 2004-11-11 23:38
「勉強系」に分類されてるのにバカネタばっかりだったので、久しぶりに頑張って難しい系を書いたら風邪引いちゃいました。

>andantino
メガネ屋のあれは、光の波長によって屈折率が違う性質を利用したやつだから、また話が違うような気もするけど。
黄版の白/黄系がボケボケなのは、黒/青系がボケボケなのと同じ理由なんだろうなぁ。
NTSCのQ色差信号の帯域が狭いというのに対応しているのだろうと。

>ble_n_dy
あらー。(笑)
近視の矯正の場合では、赤が良く見えるのは補正が不足(レンズが弱い)、緑が良く見えるのは補正が過剰(レンズが強い)なので、両方が同じくらいに見えるのが理想です。
なので、赤と答え続けると「まだまだ補正が足りないんだな」と解釈されて、過剰に強いレンズでメガネを作られてしまいます。
最近はそういう事のないように全自動の検眼機もかなり普及してきています。
Commented by andantino at 2004-11-12 00:09
あんとにん先生 博学だのぉ
さすがでつ
Commented by antonin at 2004-11-12 02:33
>andantino帝
なんというか、ほら。
ネット上の情報をしきりに参照しながら書いています。
一番偉いのは仕事で結果出せるヤツです。
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