安敦誌


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商売の基本(2)

前項では、生物と人類の歴史と、それに連なる通商の歴史を概観した。ここで、現在の日本市場に強く求められている商売について考えてみる。まず、重要な資料を参照することにする。

Geekなぺーじ : 勝者と敗者の違い

大胆にも重要部分を全文引用してみよう。
  1. 勝者は間違ったときには「私が間違っていた」と言う。
    敗者は「私のせいではない」と言う。

  2. 勝者は勝因は「運が良かった」と言う。例え運ではなかったとしても。
    敗者は敗因を「運が悪かった」と言う。でも、運が原因ではない。

  3. 勝者は敗者よりも勤勉に働く。しかも時間は敗者より多い。
    敗者はいつでも忙しい。文句を言うのに忙しい。

  4. 勝者は問題を真っ直ぐ通り抜ける。
    敗者は問題の周りをグルグル回る。

  5. 勝者は償いによって謝意を示す。
    敗者は謝罪をするが同じ間違いを繰り返す。

  6. 勝者は戦うべきところと妥協すべきところを心得ている。
    敗者は妥協すべきでないところで妥協し、戦う価値がない所で戦う。

  7. 勝者は「自分はまだまだです」と言う。
    敗者は自分より劣るものを見下す。

  8. 勝者は自分より勝るものに敬意を払い学び取ろうとする。
    敗者は自分より勝るものを不快に思い、アラ捜しをする。

  9. 勝者は職務に誇りを持っている。
    敗者は「雇われているだけです」と言う。

  10. 勝者は「もっと良い方法があるはずだ」と言う。
    敗者は「何故変える必要があるんだ?今までうまくいっていたじゃないか」と言う。

これを読んで、いくつかの反応ができる。ひとつめは勝者の意見であり、「ここにある勝者のように考え、行動するようにしよう」と自らを戒めるもの。ふたつめは敗者の意見であり、「このようなくだらない分類にはうんざりだ」と自らを慰めるもの。みっつめは奢れる者の意見であり、「自分は明らかに勝者だが、こういう敗者が多くてうんざりだ」と自らを崇めるもの。ただし、更に異なる反応も可能だろう。

つまり、ある人の性質がその人を勝利に導くが、また同時に、勝利こそがその人に勝者の性質を与えているということに気付くだろう。そしてまた、ある人の性質がその人を敗北に導くが、また同時に、敗北こそがその人に敗者の性質を与えているということにも気付くだろう。どこかに微妙な分水嶺があり、ある人は勝者の地へと流れ下り、またある人は敗者の地へと流れ下る。最初の差はほんの微妙な違いでしかないが、流れ着いた地から分水嶺を越えることは簡単ではなく、世界にはその人を低地に留めて離さないような力が働いているのに気付くだろう。

勝者の地には、勝者がひしめいている。敗者の地には、敗者がひしめいている。ここに濃淡の差が生じ、そこには通商のチャンスが生まれる。商売の基本は、安く買って高く売ることである。

現代日本では、転職斡旋業が盛んである。組織の中で力が発揮できず燻っている人が、他の組織では必要とされる人材であるとき、その人は転職によって能力を発揮するようになり、個人も社会も利益を得る。ただし、個人では多くの会社を知り、接触することは難しい。ここに人材商社としての転職斡旋業が価値を生み出す。能力を発揮できないでいる人を安く買い、能力を発揮できる場所へ高く売る。商売の基本に忠実である。

同様に、人材派遣業もそれに近いポテンシャルを持っている。企業が終身雇用するには特殊すぎるスペシャリストだが、自分で事務所を開くほどに高い収益力を持った弁護士や医師などのスペシャリストではない場合、人材派遣会社が複数のスペシャリストを雇用し、その専門技能を必要とする企業へ必要な人数を必要な期間だけ派遣する。これが本来の人材派遣業務であり、これは法改正以前の本来的な人材派遣業の姿である。

しかし、現在では工場での軽作業なども人材派遣業で成立している。人々は鵜飼いの鵜のように、飲み込んだ魚を吐き出すような仕事に駆り出されている。働いているのは川の中だが、魚は客のものであり、首には鵜匠の持つ紐が括られている。人々は勝利のない日々を過ごし、徐々に敗者の精神に染まり、その精神によってさらに敗北を重ねていく。そして、その精神のために敗者になったのだと勝者から嘲られる。

商人はここに目を付けるべきだ。敗者は、はじめから敗者の精神を持っていたのではない。そして、必ずしも一生を敗者として終える運命にもない。かといって、一敗地に落ちた者が簡単に勝者の精神を身に付けられるものでもない。ここに商機はある。敗者はとにかく安い。今の日本は敗者だらけだ。供給も豊富であり、また敗者の精神によって働きも悪いから、安く買い取る事ができるだろう。これを、必要とされる所へ運び、高く売ろう。

敗者は酸化物である。燃え尽きて、焦げ固まっている。これをそのまま売っても買い手がいない。よりいっそう買い叩かれるだろう。ではどうするか。酸化物を還元する業者へ売るのだ。敗者の存在価値を認め、自信を与え、また小さな仕事を与え、その結果のどんなに小さな成果も認め、敗者を小さな勝者にする。全ての敗者が小さな勝者になることはないだろうが、どんな産業にも収率というものはある。とにかく、手に入れた以上の価値を生み出す事が産業の基本だ。

そうすれば、百戦錬磨の大きな勝者には敵わないにしても、小さな仕事ならやっつけられる小さな勝者が生まれる。これはきっと高く売れる。なぜなら、小さな勝者は自力で小さな勝者であり続ける可能性が高いし、その後に大きな勝者に化ける可能性すらある。小さな勝者は大きな勝者より多く得られるはずだし、したがって低コストだ。そして、おそらく敗者よりははるかにコストパフォーマンスが高いだろう。これは、元敗者である本人にとっても、社会全体にとっても利益が大きいだろう。これぞ望まれる商売である。

しかし、今の日本には敗者を勝者に還元する業者がほとんど存在しない。したがって、そのような産業を育てるところから始めなくてはならない。かつては学校がその役割を果たしていたが、今では勝者と敗者の選別所でしかなくなっているために、その役割を期待できなくなっている。どちらかといえば、禅寺のような存在がそうした能力を持っていたが、今ではその能力も風前の灯となっている。

しかし、現代日本にもカウンセリングやコーチングといった精神面でのリハビリテーションやトレーニングに関する専門家が多く存在する。しかし彼らの能力はいまだ個人レベルに留まっており、組織として能力を発揮している場面は少ない。既存企業の中枢は勝者の精神の持ち主によって固められているから、彼らがいくらコーチングの本を読んだところで、本業の片手間では敗者の還元業までは不可能だろう。

そこで、自信と慈愛にあふれた専門家を集め、敗者を敗者と認め、それをなじるのでもなく、また労働力として近視眼的な業績を求めるのでもなく、勝者の精神を身に付けさせて社会に求められる人材に転換し、企業などに高く売り出すことで利益を上げることを業務の柱とする。そうした営利組織の成立が、現代日本では強く求められているはずだ。

現代日本の敗者たちは、程度の差もあるが相当数がうつ病やそれに類似の状態にあるから、医療としての対応が可能な精神医学との連携が重要だろう。患者と呼べるレベルの人材から負け犬根性が染み付いているだけという程度のレベルまで含め、還元の第一プロセスは、カウンセリングになるだろう。まずは心の傷を癒し、弱ったりひねくれたりした根性を矯正する段階から入らなくてはいけないケースがほとんどだろう。

還元の第二段階は、コーチングになる。この段階は第一段階とクロスオーバーすることになるだろうが、仮想目的を設定し、目的を達成する過程を楽しむことを第一義とする。その過程で、PDCAサイクルであるとか、目標を細分化して毎日の目標設定を明確化するだとか、いわゆるビジネス本にあるような手法を身に付ける。上司の指示のもとで着実に業務をこなすことに適性があればそれを軸に、人の上に立って旗を振ることに適性があればそれを軸に自信をつけ、その外側へも踏み出す動機を身に付ける。

この第二段階においても、自己管理手法や対人技法を身に付けることは副次的な目的であって、やはり主目的は自己効用感を高め、向上心を持続させる精神的なトレーニングにある。一度社会に出てから敗れた敗者たちは、なにかしらの専門技能や特技を持っている。だから、それらの技能に関しては本人の修練に任せるべきで、人材還元業としては向上心そのものを植え付けたり回復させたりすることに集中すべきだろう。負のスパイラルも正のスパイラルも、どちらも自動的に回り続ける。還元業の急所は、負から正に転換する作業に特化することである。

この急所が固まってしまえば、あとは周囲を埋めることで産業は動き始める。周囲とは、人をどのように買い、どのように売るか。企業から研修名目で預かるのか、研修の充実した派遣業の一種として求職者を雇用するのか、あるいはビジネススクール的に敗者たちから料金を取るのか。現在成功しているモデルに倣うならば、派遣業のモデルが最も有望だろう。

敗者たちもいつか勝利することを求めている事が多い。勝利を目指すセミナーとして広告を出せば応募もあるだろう。しかし、すでに敗者であるので資産は少ないはずだから、本人たちから料金を取るのでは仕入れ効率が落ちる。通常の人材派遣業務で基礎利益を上げつつ、本来利益の上がりにくいやる気のない人材を通常より多めに抱える。そして彼らに対し中期利益を見込んだ還元プロセスを実施する。そこで勝者に転換した人材は派遣なり中途採用なりで企業に高く売る。

一定期間で転換できなかった人材は放出する。これは冷酷なようだが、効果が出ない治療を長く続けるよりは新天地を探さざるを得ない機会を与えたほうが本来正しい。飼い殺しというのは最悪の状況であり、なんとなく今日と同じ日が明日も続くだろうという、悪い意味での公務員体質に陥ってしまうだろう。これは還元業の成果としては認められない。この条件は予め明示して本人の了解を得ておくべきだろう。

こうした業態の還元業を成立させるには、経歴やスキルよりもやる気が大切というイメージ戦略も同時に必要とされるだろう。もちろん実際の価値は経験やスキルとやる気の積になるが、やる気が先立つものであるというのは冒頭の引用からも明らかだろう。そのためには、無駄な自信や空回りする意欲ではなく、数々の失敗に裏付けられた貴重な成功体験を伴った、適正な自信や空回りしない意欲を養う事が必要だろう。

これは簡単ではなく、有能なカウンセラーやコーチングの専門家の確保という問題や、還元手法が確立するまでの歩留まりの低さなどから、当初の事業規模は当然に小さなものになり、産業の成長には長い時間が掛かるだろう。しかし、今の日本には強く求められる産業に違いない。教育機関は若者のためのものであって、これがどんなに機能を回復しようとも、既に社会に出て負け続けた敗者たちを立ち直らせることはできない。日本から「仮の」敗者が消え去ったとき、この産業は歴史的な役割を終えることになるが、少なくとも今世紀中は産業として成立するだろう。

商業の基本は、安く買って高く売ることである。産業の基本は、価値の低いものを買って価値の高いものを作ることである。どちらも、世の中に潜在的に求められるものを提供するのが基本的役割である。共同体は、それぞれの違いに応じて役割を分担し、弱っている者があれば健康な者がこれを助けることで、全体としての利益を向上させてきた。愚痴を垂れ流してすぐにキレる敗者たちが世にあふれる日本は、実は貴重な都市鉱山である。これを還元再生する産業が、日本を衰退社会から持続可能な社会へと転換するだろう。

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安敦誌 : 商売の基本(1)
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by antonin | 2008-08-20 01:55 | Trackback | Comments(0)
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