安敦誌


つまらない話など
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素晴らしき日本語の世界、或いは中年の憂鬱

文藝春秋を今月も買ってきた。ついでに、季刊本の文藝春秋SPECIALというのを買ってきた。題して「素晴らしき日本語の世界」。「素晴らしき」とは言いながら、その7割ほどは日本語の素晴らしさを称えるよりも日本語の不甲斐ない現状を嘆くもので、読んでいて気が滅入る。

ある分野が尊重されていない現状があって、それは実は素晴らしいものなのだから、もっと尊重されてしかるべきだというような意見をよく目にする。しかし、そういう意見の出所がその分野の真っ只中からしかモノを見られないような当の専門家である場合には、たいてい眉に唾するようにしている。

教育こそは国の根幹を成すものであり、何よりも重要である。実にそのとおりだと思うのだが、教育予算を増やすべきだと力説している人が教育者自身であったりすると、大変白ける。科学工学は産業立国の根幹を成すものであり、何よりも重要である。実にそのとおりだと思うのだが、科学技術育成のための予算を増強すべきだと力説している人が科学者や産業界の重鎮であったりすると、大変に白ける。医療にしても福祉にしても同様である。

そして、日本語についても同様である。日本語の美しさを大切にし、日本人が古くから愛してきた美しい言葉に、多くの人が接する機会を増やすべきである。実にそのとおり。しかし、そういうことを力説する人が、日本語の美しさしか知らないような人であったりすると、その視野の狭さに接して一気に白ける。

「心に届く日本語を身に付ける」と題して、言葉を述べている大御所がいるのだが、その出だしが、
 最近よく感じるのは、相手の立場を思いやった会話ができない若い人が多くなっているのではないかということです。

というような文章になっている。なんという皮肉だろう。こんな、「若い人」の立場に対する思いやりに欠けた話では、きっと「若い人」の心には届かないだろう。なんという皮肉だろう。「最近よく感じるのは」といいながら、話の中には自分が若かった頃に当時のおじさんたちから投げつけられたセクハラまがいの言葉に対する不満が述べられている。なんだ、昔だってひどかったんじゃないですか。今の若い人は概ねこういう無神経なことを言わなくなっているんでしょう。男らしくないと詰られながらも、極めて紳士的に振舞っている人が大勢を占めているが、印象に残るのが例外的な人のほうであるのは世の常である。

大方こうした具合で気が滅入るのだが、ときどき日本語の美しさをストレートに語るエッセイが混ざっていて、読むほうとしては救われる。そういう冷静な見極めができている人というのはたいていは日本語の世界の外側にもある種の美を見出している人であって、そういう視点をもった人の語る日本語の美しさというものは素直に心を打つ。日本語というのは相当にいびつなものである。特に明治以降はそうである。けれども、そのいびつさもまた日本語の含み持つ財産なのであって、それを認められないような意見は白々しく聞こえる。

日本語と漢語との付き合いは長くて、特に男言葉というのは漢語の言い回しとは切っても切り離せない関係にあった。平安以前の男たちは全ての言葉を漢字で書きつくす術を知っていて、また漢詩を読んでも美しい七五調で読む術を知っていた。一方のおんなことばというのは、やまとことばの柔らかさを受け継いでいて、また違った美しい響きがある。そういう美しさはそれとして確かに重要だろう。

けれども現代語にも未成熟ながらも美感を探る活動というものがあって、そういうところにも徐々に目を向けられるようになれば日本語も豊かになっていくのだろう。お前さんたちの日本語は実になっとらんなどと小言を浴びせられながら日本語の美しさに目を向ける人などいるだろうか。粛々と美しい日本語を迸らせればいいではないか。時機が来れば、気付くべき人は抛っておいてもその美しさに気付くものだし、気付かない人は何をやっても気付かないものだ。

日本語の乱れを嘆く人は、ぜひともヒップホップやラップの歌詞を美しく和訳することに挑んでもらいたい。それに成功すれば、自ずと若い人の関心も日本語の豊かさに向けられるというものだろう。老いた人が古きを懐かしんでは新しきを嘆きあう場というものも確かに必要なのだろうが、我々中年世代というものは、老年と若年を適切に切り離して互いの心を平穏に保つよう努めなくてはならないのかもしれない。
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by antonin | 2008-09-16 17:38 | Trackback | Comments(0)
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