安敦誌


つまらない話など
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「会社員」は職業か

あえて疑問形で書いてみたが、もちろん、「会社員」は職業ではない。それは、就労形態の別に過ぎない。それは株式会社なり有限会社なりという組織に雇われているということしか語っておらず、職業の別は全く表していない。では何を表しているのかというと、それは身分だ。

日本には職業に貴賎の別がないということが常識として定着しているが、一方でどこに属しているかということには圧倒的な貴賎の別がある。家庭に属しているか否か。主婦か子供か、さもなくば世帯主であるか。企業に属しているか否か。会社員であるか、さもなくば会社を経営しているか。役所に属しているか否か。公務員であるか、さもなくば代議士であるか。

家庭の良し悪しは家庭への帰属の有無に比べれば小さな問題だが、それでも貧しい家庭よりは良家が尊重される。企業の良し悪しは企業への帰属の有無に比べれば小さな問題だが、それでも非公開の有限会社よりは一部上場企業が尊重される。役所の良し悪しは役所への帰属の有無に比べれば小さな問題だが、それでも地方の村役場よりは中央官庁が尊重される。

日本人は個人の資質で評価されるより前に、個人が帰属する母体によって評価される。であるから、職業欄と書かれていてもそこで問われているのは個人の職業では決してなく、あくまでどういう組織に帰属する人物であるかということである。であるから、「技師」などと書いてもそれには何の意味も無く、答えるべきは「会社員」であるか「公務員」であるか、あるいは「自営業」であるかの別である。家庭に属しているなら「主婦」と答えなくてはならない。

日本の個人は今もこういう扱いを自然に受け入れている。職業欄に身分を書き入れることにあまり大きな疑問を感じないでいられる。であればこそ、「公務員」とも「会社員」とも書くことができずに「パート」や「アルバイト」と書かざるを得ない状況が、大変な問題を引き起こす。たとえ実態はパートタイムワーカーであっても、派遣会社に身を置き、堂々と「会社員」を名乗れる状況で日々の職場に出向くのが、日本人としての安定した生活には欠かせない。

日本の金融は、個人には決して金を貸さない。金を貸すのは、個人が寄っている大樹であるところの勤務先が備える信用に対してである。あるいは、個人が先祖から受け継いだ土地が持つ信用に対してである。日本においては、どのような個人の資質も価値を持たない。個人の価値を示したいと思うならば、どのような危険を冒してでも自力で資金をかき集め、まずは企業を打ち立てなくてはならない。一度冒険に成功して企業が動き始めれば、そこで初めて日本の金融は金を貸すようになる。

しかしそこでも、起業家個人の資質ではなく動き始めた企業に対して融資されることに変わりはない。ひとたび経営者が企業経営に失敗したならば、もはや彼の再起に必要な金は貸し出されない。彼は再びどのような危険を冒してでも自力で資金をかき集め、自力で企業を再建しなくてはならないだろう。「会社員」でも「自営業」でも、ましてや「公務員」でもない一個人に融資する金融機関など、日本には存在しないのである。唯一の例外は、消費者金融である。定職が無くとも、頑張れば50万円程度は借りることができるだろう。

寄って立つ勤務先も定まらず、親の勤務先を当てにできたり先祖伝来の地を担保にできるような家庭にも属さない個人であれば、アパートに部屋を借りることさえ難しい。そもそも、この状態では定職を求めることすらできない。前職の勤め先が信頼できないようでは、新しい定職を求めることさえも難しい。刑務所を出た人が再び刑務所を目指すほかに道がないのも、似たような事情によるところが大きいのだという。

和を以て貴しと為すのがこの国の美しき伝統だが、ひとたびこの和から外れてしまえば、再び和の中に入ることは非常に難しい。人々は自然、この和にしがみつくことに必死となり、この和から外れないことに生存の全てを賭けるようになる。和とは家庭であり、和とは企業であり、和とは役所である。

公務員の座を失う官僚が、血眼になって新しい帰属先を求めて天下りすることを、日本人は誰も責めることができない。会社員の座を失う社員が、血眼になって転職先を求めて活動することを、日本人は誰も責めることができない。主婦や世帯主の座を失う男女が、血眼になって再婚相手を探すのを、日本人は誰も責めることができない。職業にも家柄にもさしたる貴賎はないが、無所属はこの国において最大のタブーなのである。

あなたの職業はなんですか? 私は会社員です。
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by antonin | 2008-09-16 23:53 | Trackback | Comments(5)
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Commented by NAF at 2008-09-17 01:50 x
>日本人は誰も責めることができない。

↑私<は>同感です。でも、「ケチをつける人(達)」はいました。実際に。

具的な話も添付するべきかもしれませんが、あまりにも切なすぎるので
割愛します。悪しからず。
Commented by antonin at 2008-09-18 00:04
>なふん

えぇ、具体的な話は要りませんよ。気が向いたら匿名でネットに向かって独白してみてもいいかもしれません。王様の耳はロバの耳。
Commented by ふぁぜろ at 2008-09-18 02:08 x
なかなか たいへん あるね にほん・しゃかい わ
けど さいご に もの いうのわ ぴかぴか の きん あるよ
そやけど その きん お あつめる にわ、
やはし 「ちゃんとした」とこ に やとわれてる ほーが
あつめやすい ねんね。
かなん なー
Commented by oki_mo at 2008-09-18 19:06
職業に○をつけましょう。というところで、「主婦」に○をつけるのが嫌だった記憶が(笑)
今は「会社員」につけちゃってるけどね(笑)
Commented by antonin at 2008-09-20 05:18
>ふぁぜろ

なかなか大変あるよ。でも、日本社会に限ったことじゃないと思うけどな、大変なのは。モラルが高くて品行方正な社会ってのもまた窮屈なもんだし、モラルが低くて危なっかしい社会というのもまた気が抜けないし、どっちもどっちでしょう。

>おきちゅー

すいません、最近書くばっかりでネット巡回できていません。はぁ。

「主婦」ってなんとなく嫌な響きがあるよねぇ。それを「職業」という項目に押し込むのがいけないんだろうけど。「主夫」って結局普及するんだろうか。アメリカなんかは看護婦さんを看護師さんにしてスチュワーデスをフライト・アテンダントにした勢いで、housewifeをhouse-keeperにしちゃったらしいんだけど、日本もそのうち中性化して「家守」とか言い出すかもしれないね。かなりいや。
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