安敦誌


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生物と無生物のあいだ

皆殺しの天使 : 「生物と無生物のあいだ」・酷評1/2

皆殺しの天使 : 「生物と無生物のあいだ」・酷評 2/2

上記で酷評されているので、ゆるやかに擁護してみる。結論からすると、これは「講談社現代新書」なのであって、「ブルーバックス」ではないのだ。そこには、かなり決定的な意味があるようにも思う。読者が求めるべきなのは、生物と無生物のあいだに横たわる複雑性の臨界などについてではなく、現役科学者の書く美しいエッセイなのだろう。

そして気付くべきは、この本は生物と物質たる無生物の臨界を論じている一般向け解説書なのでは決してなく、生物学と非生物学の対比の中で、生物学とはいかにロマンあふれる学問であるかという物語を通じて、予算や学生を生物学領域へと引き入れようという、プロパガンダ作品でもあるという点なのだろう。正確さよりも強さや美しさが優先される領域というものは、確実に存在する。

そういう限定付きで、私は本書を大変な良書とみなしている。繰り返すが、本書はブルーバックスではないのだ。だって、文章がうますぎるだろう、これ。

参考に、本書に関連した過去記事へのリンク。

安敦誌 : 書籍往来
どちらかというとコメントの対話に注目して欲しい。

そして本書に影響を受けた妄想。
安敦誌 : 常在ウィルス仮説
安敦誌 : 続・常在ウィルス仮説
こうした妄想のネタになったという一点だけでも、本書を買った価値があったと個人的には思っている。

それから、野口英世さんが日本で言われているほどには偉大な発見をしていなかったということが判明したのも、本書からの大きな収穫だった。もちろん、こちらも傍証に当たれば、外れも多かったが当たりもあったという、冒険的な研究者にしてみれば当然というような点を批判しているだけということが知れるのだけれども。

それから、用語としての「動的平衡」批判をひとつ。
安敦誌 : 時間論とか

全体的に、人文学分野をカバーする講談社現代新書にあって、これだけ読ませる文章で生物学を論じたということ自体が賞賛に値するように思う。学術的内容のほうは、極論してしまえば、どうでもいいのだろうとも思う。もちろん、この分野の専門家にはそれでは不満だろうが、この本には、広く売れることそのものに大きな意味があるのではないかと思う。本書を読んで疑問を感じる人がいれば、それが本物の分子生物学への入り口となるかもしれない。

なにより、これだけ良質の批判的書評が読めてしまうというのが、こうした書籍が世に流布する価値のひとつであるとも考えている。大手ニュースサイトが限定的ながらも読者の声を書き込めるようにしている場合があるが、こういう場合ニュースは単なる呼び水であって、それに付けられるコメントのほうが100倍おいしいということも珍しくないのだ。本書もそういう役割を存分に果たしているように思う。

最後になるが、ノックアウト実験への擁護をひとつ。

差分解読法 - Wikipedia

あまりにも複雑な未知の系に対し、正攻法で論理的かつ因果的な関係を暴いていくのでは、非常に多くの時間を必要とする。そういう場合に、まず原因となるであろう側に実験者の支配の及ぶごく微小な変化を施し、それが結果となるであろう側にどの程度の影響が及ぶかを、地道にちまちまと調べることができる。いきなり真理には到達しないまでも、真理の傍証となる幾許かの情報を少しずつ集めることができる。そしてこの差分情報というものは、未知の系を理解するための重大な鍵が含まれていることもあって、あまり軽視すべきではないようにも思っている。

脳科学の研究でも、言語野などの特定部位の損傷を研究することが有意な知見をもたらしたのと同じく、ノックアウト実験もまた、特定部位のDNA塩基配列が大きな影響を及ぼす表現領域を同定するという程度には意味があるだろう。それは更なる解析のための重要な足がかりとなるはずだ。もちろん、その変化がノックアウトした遺伝子のみが直接に支配する表現形であるなどと素朴な誤解をしてはならないが、それはまた別の話だ。

Amazon.co.jp: 生物と無生物のあいだ (講談社現代新書 1891): 福岡 伸一: 本
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by antonin | 2008-10-16 03:26 | Trackback(1) | Comments(0)
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Tracked from 皆殺しの天使 at 2008-10-17 09:12
タイトル : 「生物と無生物のあいだ」++
安敦誌さんからTrackback頂きました。記事を読んでくださったようで、逆に福岡さんを擁護する立場で改めて記事を安敦誌さんが書いてくれています(リンク:http://antonin.exblog.jp/9696669)。たぶん昨日の尋常ならぬアクセス数はこの人由来ですね、hahaha 議論みたいな感じにはしたくはないんですが、感想という形で私もレスポンス。 現代新書として書かれた一般書だから、理学書ではないし、科学に携わる方以外にも広く学問の楽しさ素晴らしさというのを広めることが目的であ...... more
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