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政治の季節になってしまって、それ自体にはあまり興味はないのだが、投票はしなければいけないので資料になる本を読んだりしている。今のところ途中で放り出してしまっていた「日本会議の研究」をボチボチ読み直している。 動画やtwitterで見る菅野さんの豪気な印象に反して、ものづくり分野で品質管理を手掛けていた人物だということがわかり、とても意外で面白かった。日本会議を研究するに至り、そしてその研究成果を誰より先に知ることになった菅野さん自身の立ち位置から、本書の中で日本会議は危険な侵略生物のような扱いを受けているわけだが、それでも努めて冷静にエビデンスを挙げていこうという姿勢があって安心して読める。 著者が中立に見えるより、中立でない心理を隠していないほうが、読者としては著者の持つバイアスを忘れずに接することができるので、かえって読みやすい。怖いのは、神のような冷静さと客観性を上手に装う著者だ。疑いなく読める本というのは、文章を読んでいる自分を疑う作業を忘れさせるので、そこが恐ろしい。言葉になった全ての情報は、それ自身疑いうるものなのに。本書は、著者と自分を疑いながら読むことができるので、読者としては緊張を強いられるが、その点にこそ安心がある。良書だと思う。 今回の選挙の争点の一つに「保守」というものがあるのではないかと思うのだけれど、保守主義というのは本来コンサバティブなものだ。ところが、今では共産党が最もコンサバティブで、現政権に近い勢力の主張がラディカルという面白い状態になっている。社会制度が激変してしまったとき、それを元に戻そうとする態度は保守的で、その変化を支持する態度が革新的だ。 ところが、変化が維持されて長く経過すると、社会は変化に順応し、変化した後の社会制度に合わせて動くようになる。そういう時代になると、かつて起こった社会制度の激変を認めない人が、現行社会を認めず復古主義を掲げるという革新的態度になり、かつて革新的であった人は現状を良しとする保守派になっている。復古主義と保守主義とは全く別のものなのだが、両者はなだらかに接続しうる。 昔、アハ体験というのがテレビでもてはやされていたころ、テレビの画面の中で非常にゆっくりとした色や形の変化が起こっているのに、人はよほど注意していてもそれを知覚できない場合があるというのを体験した。それに似て、かつての保守派は今では復古主義革命を掲げており、かつての革新派が今では社会主義保守を掲げているということに気付かない人が多い。もちろん、若い人は歴史を早回しで見ることになるので、その変化に気付いている。しかし、実時間でそれを体験してきた人たちは、しばしばその変化に気づいていない。 私は社会制度については漸進主義者で、非革命的で永続的な革新を好む。復古的な革命主義者については、幼い時に聞いた祖父母の愚痴を真に受けて育ったような人達だと思っていて、実はあまり好まない。けれども好みに合わない人たちの事情もそれなりに斟酌して折り合いをつけていくのが漸進主義だと思っているので、主義的にはなんとか落としどころを探すしんどい作業をすべきという話になる。 十人の声を聞き分ける聡い耳を持ったという人の伝説が我が国にはあって、私が子供の頃には最高額紙幣の顔であったりもしたのだが、その漸進主義の理想を体現したような人の話が、子の代で断絶したという結末だと聞くと、そうそう楽な道ではないのだということだけはわかる。
by antonin
| 2017-10-08 18:07
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