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イエス・キリストには人間の両親があり、父はヨセフ、母はマリアといい伝えられている。ただ、イエスは神の子でもあるので、母マリアが処女受胎したということにもなっていて、ヨセフはイエスの養父に過ぎないということにもなっている。このあたり、エジプト王家の ところでこのマリアとイエスの生きた時代を考古学的に検証すると、ローマ帝国の初代皇帝アウグストゥスから二代皇帝ティベリウスの治世の頃、ということになっているらしい。この時代のエルサレム周辺地域はローマ帝国の強い影響下にあったけれども、ローマの自治を重んじる傾向から、アウグストゥスの治世下ではその統治能力をローマに認められたユダヤ王のヘロデがその地を統治していた。 その後100年ほどの期間でユダヤのローマ影響下での自治の構図は崩れてしまい、ユダヤ人は国家を失ってローマ帝国の属州に組み込まれてしまったのだけれども、強固に戒律を守り続けたユダヤ人と違って、ユダヤ人の奉ずる神への信仰という基礎は共有しながらも、もう少し柔軟に物事を考えたキリスト教徒は、最終的にローマ帝国を覆い尽くすことになる。 そういう背景を知って気になるのが、イエスの母の「マリア」という名前である。福音書の物語にはマグダラのマリアという女性も登場するので、マリアという女性名はかの地では珍しいものではなかったのだろう。このマリアという名前、より正確に書くなら"Maria"というラテン文字記述された女性名が、どのあたりに由来するのかというのが気になる。 イエスをラテン文字で書くと"Jesus"となるけれども、これもあのあたりに住んでいたユダヤ人には珍しくない名前で、本来アラム語やそれより古い言語に由来する名前なのだろう。それを新約聖書の記述言語である当時のギリシャ語で書くと"Ίησους"となり、それをさらにラテン語で音写すると"Jesus"となるのであって、ヘブライ文字で書けばおそらく"הושע"(「ヨシュア」)となるのだろうというようなことがWikipediaに書かれている。 “Maria”という名前も似たような音写の果てに生じたものなのだろうけれども、”Jesus”と違って”Maria”という名前は、ローマ人の名前のシステムに馴染みやすい名前になっている。ローマ人の名前のシステムとは、男なら名前の語尾に”-ius”が付き、女なら語尾に”-ia”が付くというものである。しかもこの語尾より前の部分はしばしば男女で共有される。 初代皇帝アウグストゥスの名前は、今で言うローマ皇帝の座に就いてから自ら名乗りたいと申し出て、元老院議会で承認された呼称であり、当時のローマ人では珍しくなかったあとづけの名前なのだけれども、この人にはもともとオクタヴィアヌスという名前があった。塩野七生さんの「ローマ人の物語」に出てきた話によれば、”Octavius”というのは数字の8という意味の”oct-”と男性名を表す”-ius”を適当につなげたもので、日本語で言えば「八郎」みたいな名前であり、他にも「十郎」になる”Decius”など、いかにも子沢山な様子が目に浮かぶような名前があったらしい。 ただしローマ人は親の名前を受け継いだりするから、”Octavius”の子孫の男性も家系名として”Octavius”を名乗ることもあったし、「”Octavius”の息子」という意味の”Octavianus”を名乗ることも、ローマ人の名前のシステムからは普通に起ることだったらしい。 そして、”Octavius”家の娘なら”Octavia”という名前になることが多く、実際にアウグストゥス(オクタヴィアヌス)の姉の名前も”Octavia”であったというように伝わっている。ローマに帝政の道を開いたユリウス・カエサルのフルネームをラテン文字で書くと”Gaius Julius Caesar”になる。私はラテン語に詳しくないので良くわからないが、時代が古いラテン語には”G”と”C”の区別が存在していなかったり、同様に”J”と”I”や”U”と”V”の区別もついていない時代もあったようで、上記を”Caivs Ivlivs Caesar”と書くことも「あり」らしいのだけれども、そのあたりは気にしないで慣用的な表記に従うことにする。話が飛んだが、”Gaius Julius Caesar”は、ユリウス一族のカエサル家のガイウスさん、という意味になるらしい。そしてこの家の女性は、”Julia”(ユリア)であったりすることが一般的だったようである。 そして”Maria”という名前だけれども、この名前も語尾が”-ia”というようになっているので、ローマ式の女性名のシステムを守っている。そしてこれに対応する男性名は、”Marius”(マリウス)となる。そしてローマ史上最も有名なマリウスとなると、やはり共和制末期の英雄”Gaius Marius”となるだろう。この人にはユリウス・カエサルの伯母にあたる”Julia”(ユリア)という女性が嫁いでいるので、カエサルには親戚筋にあたる。 ところがこの有名なマリウスは、都市国家ローマの伝統的な血筋には当たらないらしい。当時のローマ貴族なら、カエサルのように個人名+種族名+家系名という3つの名前を組み合わせた正式名を持っていたのに対して、マリウスには種族名が伝わっていない。このあたり、Mariusという名前が純粋なラテン種族の名前ではなくて、ローマという国家に取り込まれた周辺種族に由来する名前である可能性も考えられる。 そして、ローマ帝国の辺境に住んでいた”Maria”に話が戻ってくる。彼女の母は”Anna”であったというが、”Maria”の父は”Marius”という名前を一部にしても持っていたのだろうか。あるいはローマ風の名前を娘につけただけで、彼らはローマ式の命名法を採用していなかったのだろうか。それとも、”Maria”や”Marius”という名前の由来になったアラム語かヘブライ語の名前があって、本来そうした名前で呼ばれていたのだろうか。 “Maria”についても”Jesus”同様の説明がWikipediaにあり、ラテン語で”Maria”となる名前は、ギリシャ語では”Μαρια”となり、ヘブライ語では”מרים ”(マリヤム)となるのだという。本来ヘブライ語名であった「マリヤム」がラテン語に音訳される際に、意味的には無関係だが音としては似ている、ラテン語名の「マリア」にあてがわれてしまったのかもしれない。こうなると、聖母マリアの父がマリウスであった可能性は非常に小さくなる。 話は変わるけれども、たとえばWikipediaあたりで古代ローマの人物に関する記述を呼んでいると、左側のカラムに他言語での説明が書かれたページへのリンクがある。「ガイウス・マリウス」のページから”Italiano”(イタリア語)というリンクをクリックすると、”Gaio Mario”というページに飛ぶ。これを見て、現代イタリア人が”Gaius Marius”のことを「ガイオ・マリオ」と呼んでいることがわかる。マリウスの政敵として有名なもう一人の英雄、”Lucius Cornelius Sulla”のせりふとして「ローマ人の物語」に採録されている言葉がWikipediaの「ルキウス・コルネリウス・スッラ」というページにも転記されているが、これを引用してみる。 「君たちにはわからないのかね。 あの若者の中には100人のマリウスがいるということを」 マリウス派の台頭とマリウスの死のあとに、スッラはマリウスに影響を受けた民衆派勢力の大粛清を行い、元老院体制の機能回復を試みるのだけれども、当時まだ若かったユリウス・カエサルの処刑を見送るよう求める周囲の嘆願をしぶしぶ認めたスッラが発したせりふが上記のものであると伝えられている。しかし、当時の粛清の苛烈さから思えば、もし本当にスッラが「100人のマリウス」をカエサルに見ていたとしたら、確実に殺していただろう。もし上記のような発言があったとすれば、歴史ドラマとしては非常に面白くなるが、歴史解釈はより面倒になる。 “Gaius Julius Caesar”というラテン名は、イギリスなどの英語圏ではそのまま”Gaius Julius Caesar”と記述され、その代わりに「ガイアス・ジュリアス・シーザー」などと発音されている。これは、英語圏では”Julia”(ジュリア)という女性名はあるものの、”Julius”に相当する男性名がそれほど多く存在しないためと思われる。英語やドイツ語は一般に「ゲルマン語系」というようにくくられ、ラテン語に由来する単語を多量に含んでいるとはいえ、どちらかといえば古代ゲルマン語の影響が色濃く出ている。 一方、ローマ帝国発祥の地であるアペニン半島を領土とするイタリアや、帝政の早い時期にすっかりローマ化してしまったイベリア半島やその北に位置する土地を領土とするスペインやフランスあたりの言語は「ラテン語系」というようにくくられる。この範囲の諸言語では、人名にしてもローマ人の名前と1対1で対応するようなものが多く残っている。 ラテン語の女性名としての”Maria”に対応する名前は英語にもあって、それは”Mary”なのだけれども、たとえばイタリア語ではそのまま”Maria”として残っている。一方男性名の”Marius”に相当する名前は、英語圏ではあまり見かけないけれども、イタリアでは”Mario”として生き残っている。”Super Mario”が古代ローマに行ったならば、”Marius Superior”とでも名乗ればいいことになる(意味的にどうなるのかは知らないが)。 “Gauis Julius Caesar”にしても現代イタリア人の名前に置き換え可能な部分を多分に含んでいるらしく、イタリア語では”Gaio Giulio Cesare”となる。「ガイオ・ジュリオ・チェザーレ」とでも読めばいいだろうか。ちなみに”Lucius Cornelius Sulla”というラテン名は、英語ではそのままのスペルで「ルーシャス・コーネリアス・サラ」と読まれ、イタリアでは現代人の名前に変換して”Lucio Cornelio Silla”と呼ばれる。そして、モーツァルトのオペラに”Lucio Silla”という作品があるらしいということが検索をしているうちにわかった。いったいどんな作品なのだろうか。 そしてスッラの名ぜりふをイタリア語的に読むと、「君たちにはわからないのかね。あの若者の中には100人のマリオがいるということを」というようになり、日本人には少しにやけてしまうような響きに変わってしまう。「100人のマリオ」という言葉がなんとも気に入ったのでGoogleで検索にかけてみると、意外にも多数のページがヒットする。何事かと思っていくつかのページを見てみると、次のような動画が有名になったためらしい。 「YouTube - 画像認識で全手動マリオ」 なるほど、「100人のマリオ」はすでに映像化されていたのか。しかしこれを見ると、あの超人マリオを100人集めても「スーパー・ジュリオ」にはならないのだなぁ、と改めて思う。ユリウス・カエサルは「100人のマリウス」では決してなく、空前絶後にして唯一の「ユリウス・カエサル」としか呼べないのだと思い至る。
by antonin
| 2008-03-23 11:00
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